バニラに入っている黒い粒々の正体――「バニラビーンズ」とは何か?


vanilla bean flickr photo by a.pasquier shared under a Creative Commons (BY-SA) license

バニラビーンズといえば、アイスクリームやカスタードクリームに入っている黒い粒々を想像する人が多いかもしれない。日常生活においてバニラビーンズそのものを目にする機会はほとんど無いが、一体どのようなものだろうか?


Vanilla flickr photo by Reizigerin shared under a Creative Commons (BY-ND) license

これがバニラビーンズだ。見た目も名前も紛らわしいが豆類ではない。マメ科植物でないコーヒーノキの種子を”コーヒー豆(coffee beans)”と呼ぶように、その形がさや豆に似ていることから”ビーンズ(beans)”と呼ばれているのだ。実際は「バニラ」というラン科バニラ属の実の部分であり種子ですらない。

このバニラビーンズを成熟した後で収穫し、キュアリングと呼ばれる特殊な熟成加工を行うことで初めてバニラエッセンスのような独特で芳醇な香りを放つようになる。


Vanilla Bean flickr photo by Veganbaking.net shared under a Creative Commons (BY-SA) license

キュアリング後のバニラビーンズは乾燥して小枝のようになり黒く変色する。このバニラビーンズから香り成分を抽出して作られるのがバニラエッセンスやバニラオイルだ。

また、バニラビーンズの中にある非常に小さな種子も風味づけとして用いられる。アイスクリームやカスタードクリームに入っていた黒い粒々の正体はこの種子なのだ。


Scraping Vanilla Beans flickr photo by thebittenword.com shared under a Creative Commons (BY) license
バニラビーンズの中にはラン科に特有な小さな種子が多く詰まっている。ラン科植物のほとんどは発芽に必要な養分を持たず,自然界では菌類と共生することによってはじめて発芽することができる。

しかし、このバニラビーンズを得るのは容易ではない。受粉できなかったバニラの花は1日で枯れてしまう上にバニラの実が成熟するには9か月もかかるからだ。栽培や人工授粉、キュアリングなどの作業も含めると、得るためには多くの費用や時間、労力が必要となる。そのためバニラビーンズは市販でも売られているが、1本あたり数百円と非常に高い単価なのだ。


Vanilla planifolia flickr photo by mmmavocado shared under a Creative Commons (BY) license

原産地のメキシコではハリナシバチやハチドリが授粉を担っている。「永久不滅」という花言葉に反して,花は1日でしおれて落ちてしまう。

現在では香りの主成分であるバニリンを人工合成したものが主流であり、価格も20分の1と安価なため、合成バニリンは市場で使用されるバニラ商品の実に約99%を占めている。

しかしながら、主成分のバニリンが人工合成できるとはいえ実際のバニラビーンズの香りや風味を生み出す成分は最大で500種類にもなると推定されている。バニラビーンズは高価ではあるが決して入手が困難というわけではないので、バニラビーンズを使って”本物のバニラ”の香りと風味を堪能してみてはいかがだろうか?

コメントを投稿する