Las Vegas : Desert Edition flickr photo by kevinofsydney shared under a Creative Commons (BY) license
カフェテリア実験と呼ばれる実験がある。様々な食物や飲料を用意しておき、実験対象の動物に好きな食物や飲料を選択できる状態にしておく。このような状況において、動物はどのように食物や飲料を選択的に摂取するのだろうか?
例えばラットの場合では、短期的に見ると食物の選択には偏りが生じ、摂取した栄養素の量は離散的であったが長期的に見ると栄養素の偏りは見られなかった。つまりラットは不足している栄養素を含む食品を選択して摂取していたのだ。
これはホメオスタシス(生体恒常性)が摂食行動に対して作用し、特定の栄養素が欠乏している状態、いわゆる特殊飢餓状態を改善したと考えられている。現在ではこの選択的な摂取行動を指して”特殊飢餓”と呼ぶことがある。
この選択的摂食はあらゆる動物において広くみられる。例えばカルシウムが欠乏しているニワトリはカルシウムを多く含む飼料を選択的に摂取する。リンが欠乏しているヒツジはなんと仲間の毛を食べることさえあるという。
ではヒトの場合はどうなのだろうか?ヒトでは幼児においてこの行動が確認されている。ビタミンDが欠乏することによって発症するくる病にかかっている幼児は,ビタミンDを多く含む食品を選択的に摂取して症状から回復したという。
しかし、ある程度成長すると嗜好が定着してしまうため特定の栄養素が欠乏していても,選択的摂食はみられない。その一方で、塩辛いものを食べ続けると甘いものが食べたくなってきたり、脂っこいものを食べ続けるとさっぱりとしたものを食べたくなってくる、というような「飽きる」という現象は特殊飢餓の一種と言えるのかもしれない。
「飽食の時代」と呼ばれる現代では様々な食べ物を好きなときに食べることができる。いわば巨大なカフェテリア実験が行われているのだ。特殊飢餓において選択的摂食行動が生じない私たち人間は自分で栄養バランスを考えて食べる必要がある。あなたが真夜中に手を伸ばすポテトチップスは特殊飢餓のせいではない。