人々はなぜ猛毒のフグを食べるのか?

2017年2月22日


Fugu flickr photo by magicarp shared under a Creative Commons (BY-SA) license

フグは,前回の記事「フグ毒についての基礎知識」でも紹介した通り,食物連鎖の中で生物濃縮した毒素が体内に蓄積されるために猛毒を持つようになる。

フグ毒のテトロドトキシンは人の神経筋肉に作用し,最悪の場合呼吸筋の麻痺による呼吸困難で死に至る。それでも,人は猛毒と知るフグを愛してやまなかった。古くは縄文時代の遺跡に人骨とフグの骨が見つかっているという。縄文時代の人々が猛毒を持つそれと知らずに食べてしまった結果なのだろう。

「河豚(ふぐ)は食いたし命は惜しし」ということわざに日本人のフグに対する情熱と恐怖,躊躇が見て取れる。豊臣秀吉はかつて,フグ中毒により下関で亡くなった兵たちを見かねて河豚食用禁止令を発令したが,これは当然のことだろう。しかし,人々は愛してやまないフグを食べずにはいられなかった。

食中毒になると死んでしまうフグを「鉄砲」と呼び.その刺身を「てっさ」と呼んだのは,一説によると密かにフグを食べるための隠語であったという。
50歳になって初めてフグを食べたという小林一茶「河豚食わぬ 奴には見せな 不二の山」という俳句を詠み,「フグを食べる勇気のない者には富士山を見る資格はない」とまで句で表現しているのだ。


Tessa flickr photo by tsuda shared under a Creative Commons (BY-SA) license

そんなフグ食が解禁されるようになったのは偶然にもフグ食禁止の原因となった下関でのこと。初代総理大臣である 伊藤博文 が日清講和条約締結のために 下関の旅館 を訪れていたが不漁によりやむを得ずフグ料理を出したところ, あまりの美味しさ に感激した伊藤博文は後に 下関でのフグ食を解禁 させたのだ。これが 全国 へと広がり,フグ食は解禁となった。

フグ食の歴史には, フグから人々を守ろうとした思い と、それでも フグを愛してやまなかった人々の思い が込められているのだ。

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