種のない果物はどのようにして作られるのか?


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近年,種の無い果物を目にすることが多くなった。食べやすくて便利だが,一体どのようにして作られたのだろうか?

果物は通常,受粉を行うことで果実が形成される。しかし,未受粉でも果実が形成される事があり,これを単為結果(単為結実)という。そして,この単為結果で形成された果実には種子が作られないのだ。単為結果の例としては種が無いことでお馴染みのバナナやパイナップルをはじめ,他にもイチジクや温州ミカン,カキなどが知られている。

種のない果物を得るには,人工的にこの単為結果を引き起こせば良い。ブドウの場合,受粉前に房となる部分をジベレリンという植物ホルモンの溶液に浸すと単為結果が誘発され,種のないブドウを作ることができる。

しかし,バナナはこのようなホルモン処理を行わずとも形成された果実には種が無い。実は,この種のないバナナは突然変異によって生み出されたものなのだ。一般に,生物は2組ずつの染色体を持つ2倍体であるが,突然変異によって稀に染色体が3組ずつとなる3倍体が形成されることがある。3倍体の個体は受粉刺激によって果実は形成されるものの,染色体数が通常ではないため無種子となる。つまり3倍体の個体には,単為結果が生じるのだ。


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ハワイで採れた野生のバナナ。

通常であれば小豆程度の大きさの種がたくさん詰まっているバナナだが,突然変異によって偶然にも生み出されたこの3倍体のバナナには種が無いため非常に食べやすかった。人々は3倍体のバナナは種を採取して増やすことができなかったが、新芽の部分を植えかえることでこの3倍体のバナナを増やし,やがて現在のように種の無いバナナが主流となったというわけだ。

ジベレリン処理を行わずに種なしの果物を作る,いわゆる「種無し品種」はこの3倍体が利用されてる。スイカの場合,通常の2倍体のものにコルヒチンという物質を使うと分裂異常が起きて4倍体の個体となる。この4倍体の個体と,通常の2倍体の個体を受粉させると3倍体の個体が得られるのだ。

種無しのスイカは処理も簡単で食べやすくて便利だが,どこか寂しさを感じさせられる。珍しい種なしの品種が売り場に並んでいても,種のある方をついつい買ってしまうのはなぜだろうか。

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