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夜空の星をよく観察すると,その輝きは一定ではなく常にキラキラと絶え間なく瞬いている事が分かる。この現象はどのようにして起きるのだろうか?
星から出た光は,宇宙での長い旅を終えてようやく地球へと届く。地球の大気に入射した光は,吸収や屈折,散乱などを起こしてその経路は大きく乱れながら私たちの目にようやく届く。星の瞬きは,地球の大気によって引き起こされる現象なのだ。この現象はシンチレーションと呼ばれている。
大気中には暖かい空気や冷たい空気があり,これらが層となって密度の違いにより光の屈折が起きる。また、激しい気流の流れなどによってもシンチレーションは起きる。日本上空では特に偏西風の影響が大きい。
シンチレーションは星を眺めるにはとても美しい現象だが天体望遠鏡などを使って観測しようとするには厄介だ。望遠鏡などでの観測する場合は,より地平線に近い天体ほどこのシンチレーションは起きやすく,その天体の観測が難しい。これは,地平線に近いほど光が大気を通過する距離が長くなるためだ。望遠鏡での観測は,わずかな条件の違いでも天体の観測に支障をきたす場合があり,大きな問題となる。
アメリカ・ハワイのマウナケア山頂にある日本の国立天文台が設置した光学赤外線望遠鏡「すばる」は4,205mという高い標高にあり、大気による影響を大幅に抑えることができる。また,すばるには大気の揺らぎをリアルタイムで検出し補正を行ってシンチレーションを打ち消す事ができるのだ。
さらに,シンチレーションの影響を全く受けない望遠鏡がある。NASAが1990年に打ち上げたハッブル宇宙望遠鏡はその名の示す通り宇宙空間にある望遠鏡だ。当然ながら,宇宙空間には大気が無いので大気の揺らぎが起きないだけでなく,気象条件による影響も受けることなく天体を観測する事が可能となった。
さらに2018年にはハッブル宇宙望遠鏡の後継としてジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が打ち上げ予定となっている。星が瞬くことのない世界で,人類の挑戦は始まったばかりだ。