天文学史上,最も美しい法則になるはずだった「ティティウス・ボーデの法則」とは?


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2016年2月現在、天文学術誌『The Astrophysical Journal』で9番目の惑星が存在する証拠を示す研究結果が発表され、新しい惑星の観測が期待されている。

惑星の発見といえば、まだ土星までしか発見されていない18世紀の後期、太陽と惑星の距離に関する美しい数式が世間の注目を集めた。現在では「ティティウス・ボーデの法則」と呼ばれるこの法則は非常にシンプルで、簡単な数列であるにも関わらず高い精度で太陽と惑星との平均距離を予測する事が出来たのだ。しかし現在ではこの法則を耳にする機会はほとんどない。このティティウス・ボーデの法則とは一体,どのような法則なのか?

1766年,ドイツの物理学教授であるヨハン・ダニエル・ティティウスは当時発見されていた水星,金星,地球,火星,木星,土星の6つの惑星と太陽とのおよその距離を予測できる数式を発見した。

ここでrは太陽と惑星との平均距離を表しており、nは太陽との距離を求める惑星が何番目であるかを表している。このとき水星を-∞番目,金星を0番目として以降、地球が1番目,火星が2番目・・となるような番号を与える。また,距離の単位は地球と太陽との平均距離を1とするとなっている。実際に水星から土星までの平均距離をこの式に当てはめてみると以下のようになる。

水星 実測値=0.39 式の予測値= 0.4
金星 実測値=0.72 式の予測値= 0.7
地球 実測値=1.00 式の予測値= 1.0
火星 実測値=1.52 式の予測値= 1.6
?? 実測値=?? 式の予測値= 2.8
木星 実測値=5.20 式の予測値= 5.2
土星 実測値=9.55 式の予測値=10.0

このように高い精度で実測値と一致していることがわかる。しかし発表当時、理論的根拠に欠けたこの経験則はあまり注目されなかった。後にドイツの天文学者ヨハン・エレルト・ボーデが1772年に自著の中でこの経験則に物理的説明を加えた形で「ボーデの法則」として発表すると、この法則は瞬く間に世間に広まった。 現在ではこの法則はティティウスとボーデの2人の名前から「ティティウス・ボーデの法則」と呼ばれている。


現在までに発見されている太陽系の惑星。この画像では太陽からの距離や惑星の大きさが正確に表現されてはいない。

数式発表当時は土星までしか知られておらず,地球を除いて発見されている太陽系の天体である月,火星,水星,木星,金星,土星,太陽のみで現在の曜日が考案された。そして1781年にイギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルが天王星を発見すると、予測される距離と近い数値であったためこの法則のはさらに高まり、多くの支持者が現れた。(天王星の実測値は19.2に対して式の予測値は19.6)

次に注目が集まったのは、上記の表で??となっているn=3となるような惑星だ。そのような惑星は未発見だが、この法則が正しければこの距離の軌道を持つ惑星が発見されるかもしれないと考えた天文学者はこの距離に存在する惑星を探し始めた。

そして1801年に惑星の規模の大きさではないものの平均距離2.77の軌道を持つ小惑星ケレス(セレス)が発見され、さらなる惑星の発見に期待が高まった。

だが、1846年に発見された海王星や冥王星との距離は法則から導き出される予想と大きく異なっていたため、ティティウス・ボーデの法則は、現在では偶然の一致に過ぎず歴史的な価値しかないとされている。

しかし、近年になりティティウス・ボーデの法則が木星や土星などの衛星の軌道距離についても同様に成り立つ事が指摘されており、リーゼガング現象と呼ばれる現象では、観察される環の間隔がティティウス・ボーデの法則に従って形成されている事が明らかとなっている。もしかしたら、この法則の背景に我々には未知の法則がまだ隠されているのかもしれない。

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