梱包・工作・収納と幅広い用途で活躍する段ボール。
その知られざる誕生の歴史とは―――
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段ボールは、1856年のイギリスで誕生した。といっても、現在のように梱包などには使用されていなかった。その目的は当時イギリスで流行していた円筒状の帽子、シルクハットにある。このシルクハットの内側に貼りつけられていた汗や湿気を吸収し、通気性を向上させるための波状の板紙がダンボールの起源といわれている。
吸水性に優れており、なおかつ水分を吸収しても簡単に破けたり、折れないような素材で開発されていたのだ。段ボールが特に吸水性に優れているのはこのためである。しかし、このときのダンボールは現在で使用されているような波状の板紙を別の板紙で貼り合わせる3層構造ではなく、波状に折られているただの一枚紙であった。
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シルクハットの中で吸湿材として機能する一方,フィット感を向上させるクッション素材としても機能していたという。
この初期の段ボールは1870年代にはアメリカやドイツに伝わり、主にガラスの梱包材としてすでに使われ始めていたようだ。ガラス製品の曲面に対してダンボールは曲げやすく破けにくいのでガラスの梱包材としてはまさにうってつけの素材だったのだ。ここで、現在では片面段ボールと呼ばれる波状の板紙の片面に平らな板紙を貼り合わせた段ボールが初めて作られた。
やがて梱包の外装としても利用され始め、1894年には世界で初めてダンボール箱が製造された。当時の主流が木箱だった事を考えると、それがどれだけ革新的な事であったか想像に難くない。
これが日本へと伝わり、段ボールの製造事業を始めた井上貞治朗によって多くの段があり、高い強度を持つ段ボールが日本で初めて製造されたのだ。段ボールは当初、井上貞治郎と従業員2名と手作業でのりを使い貼り合わせて製造していたというから驚きである。後に井上貞治郎は現在でも段ボール製造業大手のレンゴー株式会社を創業することとなる。
現在の段ボールという名称は井上貞治郎により命名されたが、ではなぜ段ボールというのだろうか?段ボールの「段」は段々になっている部分「paperboard」の「ボード」を「ボール」と聞き違えたものであるという。
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ライナーと呼ばれる表面の板紙を剥がすと,段々状の中芯と呼ばれる板紙が現れる。
現在でも燃えにくい防火性の段ボールや濡れにくい防水性の段ボールなど、様々な機能を兼ね備えた段ボールが開発されており、常に進化し続けている。段ボールの歴史はこれからも永く続いてゆくのだ。