Flatfish flickr photo by papertygre shared under a Creative Commons (BY) license
カレイとヒラメはどちらも平たい姿をしており、一見するとどちらか見分けるのは難しい。それぞれ漢字で書くとカレイは「鰈」、ヒラメは「鮃」となる。漢字の右側の部分に注目すると鰈は”葉のように薄く平たい様子”を表しており、鮃はそのまま”平たい様子”を表しており、いずれも平たい様子を表している。例えば、下の写真はヒラメとカレイのどちらかお分かりだろうか?
Windowpane Flounder flickr photo by Neil DeMaster shared under a Creative Commons (BY-ND) license
この写真の魚は英語ではWindowpane Flounderと呼ばれるヒラメの一種である。では続いて、下の動画の魚はヒラメとカレイのどちらかお分かりだろうか?
答えはヌマガレイというカレイの仲間だ。もしかしたら今回は間違えた方も多いのではないだろうか?カレイとヒラメを見分け方としては「左ヒラメに右カレイ」という言葉がある。目を上、口が下となるように置いたとき左を向いているのがヒラメ、右を向いているのがカレイという意味だ。(または、魚の左面側に両目があるのはヒラメ、右面側にあるのはカレイという意味もある。)
しかしこの「左ヒラメに右カレイ」は、実のところ日本近海でのみ成立する見分け方であり、海外のカレイやヒラメはこの方法で見分けることができないのだ。世界的に見れば同じ種であっても生息域によって左向きと右向きで分かれていたり、同じ海域でも左向きの個体と右向きの個体が両方生息していることもある。さらに厳密に言えば、上記の動画に登場するヌマガレイも日本近海では左向きとなるため、日本近海であっても確実ではない。結論を言えば、カレイとヒラメの確実な見分け方は存在しないという事になる。
では、カレイとヒラメの本質的な違いとは何か?実は、交差している視神経のうち「左目の視神経が上にあるものがヒラメ、右目の視神経が上にあるものがカレイ」として分類されているのだ。例えばヌマガレイの場合は世界的に右向きの個体と左向きの個体の両方が存在しているが、これらは全て右目の視神経が上にある。
i’m in yur net…floppin’ around flickr photo by echoforsberg shared under a Creative Commons (BY) license
ヒラメとカレイは通常、表と裏で色がはっきり分かれている。しかし人工飼育下では体表の色が曖昧となり、白黒の模様が現れる事があるそうだ。この現象はヒラメにおいてよく見られ、このような個体は「パンダヒラメ」と呼ばれている。
ところで、ヒラメやカレイは生まれた時からそのままなのだろうか?実は、ヒラメやカレイの稚魚は生まれた時は一般的な魚と目の位置は同じだが、成長するにつれて目の位置が頭頂を越えて移動していくのだ。これはヒラメとカレイにおける進化の過程を発生段階でたどるために起きる神秘的な現象である。面白い事に、目が移動している期間は稚魚の泳ぐ体の向きもだんだん傾き始めて、斜めに泳ぎだすようになるという。