約30年もの間、確認されていなかった希少種「ベトナムマメジカ」の撮影に成功

2019年11月16日


Mouse Deer flickr photo by Shehan Obeysekera shared under a Creative Commons (BY) license

小型のシカに似たマメジカの希少種、ベトナムマメジカ(Tragulus Versicolor)がベトナム北西部のジャングルで約30年ぶりに発見され、その撮影に成功した。撮影に成功した研究チームの論文は、2019年11月11日付でイギリスの科学誌「Nature Ecology & Evolution」に掲載されている。

マメジカは蹄(ひづめ)を持つ有蹄類(ゆうているい)のうち最も小さな動物として知られており、体長は大型のウサギほど。名前には「シカ」とあるが、シカ科ではなくマメジカ科に属するため、シカの仲間ではない。現在までに3属10種が確認されている。

今回発見されたベトナムマメジカは、1910年にベトナム南部沿岸にあるニャチャン(Nha Trang)近郊で初めて確認され、80年後の1990年にハンターが仕留めて標本として研究者に送られたものが最後の確認例となっていた。
以降、約30年もの間確認されていなかったが、ニャチャンでベトナムマメジカと思われるような噂を地元住民やハンターから聞きつけ、アメリカの野生生物保護の非営利団体「グローバル・ワイルドライフ・コンサベーション(GWC)」が調査に訪れた。

マメジカは小さいうえに臆病警戒心が強く、1日の大半を岩陰や茂みで過ごす。それでも群れを作るならまだ見つけやすいが、通常は単独か、雌雄あるいは母子のペアで生活しており、縄張り意識が強いため、同種がやってきても追い払ってしまうのだ。仮にニャチャンの森林にベトナムマメジカが生息していたとしても、見つけるのは困難なことが予想された。

GWCの調査チームは、ベトナムマメジカが目撃されたとされるいくつかの場所に動体検知カメラを3設置し、確認されることを祈って待った。そして5か月に渡る調査の結果、ついにベトナムマメジカの写真を275枚も撮影することに成功したという。さらに29台のカメラを撮影が成功した場所に設置したところ、さらに5か月で1,881枚もの撮影に成功した。
同じ個体が何度も映っているため、正確な生息数までは分からないが、確かにベトナムマメジカは私たちの知らない場所でひっそりと暮らしていたのだ。


今回、論文が掲載された『Nature Ecology & Evolution』の公式アカウントより。


ベトナムマメジカを発見した野生生物保護団体「GWC」の公式アカウントより。

だが、まだ安心はできない。この地域ではワイヤーを使った密猟が頻繁に行われているのだ。データがさらに集まれば、詳細な生息地域やおおよその個体数を推測することができ、生息域の保護や密猟を防ぐためのパトロールを強化できるだろう。
一度は失われたかに思われたこの動物を、再び見失ってしまうようなことがあってはならない。


エピネシス・コラムズ
・英語では、その小さい体から”mouse deer(ネズミジカ)”と呼ばれることもあります。また、小さいのは体だけではありません。マメジカは赤血球の大きさが最も小さいほ乳類としても知られています。

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