クジラの餌は、おもにオキアミなどのごく小さな動物プランクトンです。
クジラがその巨体を維持するためには大量の動物プランクトンが必要であり、餌がたくさん集まっている場所を探して効率的に移動しなければなりませんが、この巨大な海洋生物がどのようにして餌場を探しているのかについてはよく分かっていません。
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熊本大学、ウッズホール海洋研究所、ストーニーブルック大学、アメリカ海洋大気局からなる研究チームは、海洋上の大気や海水に含まれるジメチルスルフィド(DMS)という化学物質に注目しています。
このジメチルスルフィドは、動物プランクトンが植物プランクトンを捕食する際に、植物プランクトンの体内から流出した成分がバクテリアなどに分解されて生成されるもので、あの独特な”磯の香り”の成分として知られています。
クジラはもしかしたら、このジメチルスルフィドの濃度分布、つまり”磯の香り”をたどって、動物プランクトンが大量にいる場所まで移動しているかもしれないと研究者らは考えています。
磯の香りをたどれば、餌場にたどり着ける?
研究者らは、アメリカ・マサチューセッツ州のケープコッド沖で大規模な調査を実施。
船で調査海域をジグザグに走行しながら、海水と大気中のジメチルスルフィド濃度、および動物プランクトン密度を計測しました。
調査の結果、小さな海域面積でもジメチルスルフィドの濃度分布には違いがあり、ジメチルスフルフィドの濃度が高い場所ほど多くの動物プランクトンが集まっていました。
クジラがジメチルスルフィドの濃度、つまり”磯の匂い”をたどることができるのかは現段階では不明ですが、少なくとも今回の実測結果からシミュレーションした結果、クジラがジメチルスルフィドを感知できるなら、大量の動物プランクトンがいる場所まで到達できることが明らかになりました。
このジメチルスルフィドは海水中だけでなく大気にも放出されることから、もしかしたらクジラだけでなく海鳥なども”磯の香り”をたどっている可能性があるといいます。
研究者らはすでに南極でも海鳥やペンギンなどを対象に調査研究を進めており、今後の展開が大きく期待されます。
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Reference:磯の香りをたどればクジラは餌の在処にたどり着く-熊本大学-