森林総合研究所と山階鳥類研究所、東京大学の研究者らは、伊豆諸島御蔵島(みくらじま)に生息する準絶滅危惧種「オオオミズナギドリ」をおびやかすノネコの実態を明らかにしました。この研究によると、ノネコ1匹あたり年間でなんと300羽以上のオオミズナギドリが犠牲になっているといいます。
オオミズナギドリは森林の地面に横穴を掘って集団繁殖するという特徴を持つ鳥で、かつては日本の多くの島で繁殖していましたが、人が持ち込んで野生化したイタチやノネコなどによって繁殖地が次々と消滅し、現在は準絶滅危惧種に指定されています。
オオミズナギドリの大規模繁殖地として知られている伊豆諸島の御蔵島(みくらじま)では、1970年代後半には175万~350万羽いたとされていますが、近年では10万羽程度に減少しました。
個体数減少の主な原因は島に多数生息するノネコによるもの考えられていましたが、これまでその実態はよく分かっていませんでした。
Kanachoro, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
研究者らは、オオミズナギドリが御蔵島に滞在している時期(繁殖期)に採取した猫のフン82個と、オオミズナギドリが島から離れている時期(非繁殖期)に採取した猫の糞86個、合計168個の糞を拾い集め、内容物の分析を行いました。
その結果、繁殖期に採取された糞では78.3%にオオミズナギドリの羽毛や骨が検出され、非繁殖期に採取された糞では91.9%にネズミ類の一部が検出されました。
どうやら、ノネコはオオミズナギドリが島に滞在する9か月間はオオミズナギドリを主食としており、オオミズナギドリが島から離れる冬の3か月間はネズミを食べることによって冬を乗り切っているようです。
また、当然ながらオオミズナギドリが滞在している時期でもネズミ類は島にいるため、どうやらノネコはネズミよりもオオミズナギドリを好んで捕食しているようです。
さらに研究チームはノネコの必要カロリー量や必要なエサの量、糞の内容物分析、オオミズナギドリの可食部重量などをもとに年間捕食個体数を算出。御蔵島のノネコは1匹あたり平均で年間313羽のオオミズナギドリを捕食していると推定されました。
論文の著者らは、かつて世界最大の集団繁殖地でさえたった1種の外来種により危機に陥る可能性があることを示すものであり、関係者・関係機関が連携し、早急に対策を講じることが必要であるとコメントしています。