金星の大気からリン化水素が見つかったのは誤検知である可能性

今年9月、イギリス・カーディフ大学を中心とした国際合同研究チームは、金星の大気からリン化水素(ホスフィン)を検出したと発表しましたが、その後行われた検証ではリン化水素が存在するという証拠は確認されませんでした。

金星の大気にあり得ない量のリン化水素を確認、生命存在の指摘も

イギリス・カーディフ大学の研究者チームは2017年、ハワイにあるジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡を使ってリン化水素の存在を確認し、さらに研究チームは2019年にアルマ望遠鏡を使って検証を行い、リン化水素の存在をより確かなものにしていました。

しかし論文の発表後、2017年にこの研究に参加していたカーディフ大学のジェーン・グリーブス(Jane Greaves)氏をはじめとする検証チームが、ハワイ・マウナケア山にあるNASA赤外線望遠鏡施設の過去の金星観測データを使って調べたところ、リン化水素が存在するという証拠は見つかりませんでした。

さらに同チームは、金星大気に存在できるリン化水素量の上限について検証を行い、どれだけ多くても検出された量の4分の1程度のリン化水素しか存在できないことを示しました。

リン化水素の存在が確認されたという高度50~60kmには濃硫酸からなる雲が存在していますが、検証チームはこうした環境下ではリン化水素がすぐに分解してしまうため、金星大気にリン化水素が存在するとしても、この高度には存在し得ないと主張しています。

リン化水素を検出した観測データからもリン化水素の証拠は確認されず

さらに別の2つの検証チームが、リン化水素が検出されたときの観測データを再検証した結果、リン化水素の存在を示すような証拠は見つかりませんでした。

最初にリン化水素を確認したとされるジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡について検証を行った結果、同じ周波数にシグナルを検出したものの、検証チームはこのシグナルをリン化水素ではなく、金星大気における二酸化硫黄ガスによるものであると判断しました。

また、2回目の確認で使用されたアルマ望遠鏡は超高感度の望遠鏡で、金星大気におけるノイズだけでなく地球大気や観測機器から発生するノイズを除去する必要があります。

研究チームはリン化水素の発見時、これらのノイズを「多項式フィッティング」という手法で除去していましたが、検証チームはこのノイズを除去する過程で何らかの問題があったものとみています。検証チームが独自にデータを補正したところ、やはりリン化水素が存在するという証拠はみつかりませんでした。

すべては必要な過程

今回の研究あるいは検証に関わる研究者らは何らかの不正があったものとは考えておらず、今後の検証によってさらなるリン化水素が実在する証拠、あるいは研究手法の問題点が明らかにされることを期待しています。

検証の結果、もし誤りであったことが分かったとしても、研究手法を見直したり観測精度を向上させる良い前例となるでしょう。さらなる検証が待たれます。

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