宇宙ではモヤシなどの発芽野菜の鮮度が長持ちする、東京大学・広島大学

収穫した後も野菜は生きており、蓄積した栄養分を消耗しながら呼吸を行っているため、次第に水分の放出によって質量が減少したり、しおれたり、変色したりしてしまいます。

そこで、私たちは冷蔵することによって野菜の生命活動、すなわち呼吸を抑制することによって、こうした劣化を防いでいます。

東京大学の研究者らは、生命活動にマイナスの影響を与えるような冷蔵環境が野菜の鮮度保持に有効であるなら、同じように生命活動にマイナスの影響を与える宇宙環境も野菜の鮮度保持に有効である可能性が高いと考えました。

宇宙環境では、微小重力や高レベルの宇宙線という特殊な環境によって、動物では筋力や骨密度の低下、赤血球減少などのさまざまな悪影響がみられます。

宇宙のこうした特殊な環境下では、植物の正常な生命活動が抑制されるために、もしかしたら鮮度が長く保たれるかもしれません。

そこで研究者らは、収穫したあとの緑豆モヤシとカイワレダイコン、エダマメをスペース・バイオ・ラボラトリーズ社の重力制御装置”Gravite®”によって、1,000分の1Gという疑似微小重力環境で保存し、一定時間ごとに質量を測定しながら通常の重力で保存してあるものと比較を行いました。

微重力下では発芽植物の鮮度が長持ちする

実験の結果、少なくとも緑豆モヤシとカイワレダイコンのような発芽野菜では、微小重力環境の方が質量保持率が高く、鮮度が優位に保たれていることが明らかになりました。


東京大学のプレスリリースより

野菜の質量が減少してしまうおもな原因は、植物が根から葉の方向に向かって水を移動させて放出する「蒸散作用」によるものです。発芽野菜である緑豆モヤシとカイワレダイコンでは根と葉が備わっているため、通常の重力環境であれば適切に蒸散が行われます。

しかし、微小重力環境では植物は水を制御できなくなり、適切に蒸散が行われなくなるため、結果として質量の減少が抑制され、鮮度が保たれるようです。


東京大学のプレスリリースより

もう一つのサンプル植物であるエダマメでは、根と葉が備わっていないため同様の効果が得られず、通常の重力環境で保存されているものと比較してもあまり差はみられませんでした。

野菜の鮮度を保つ方法としてはこれまで、冷蔵やエチレンガスの除去や無効化、低濃度酸素や高濃度二酸化炭素などの気体制御が知られていましたが、今回の研究によって、野菜の鮮度を保つ全く新しい方法が発見されました。

宇宙環境や、疑似宇宙環境での研究成果は地上で暮らす私たちにとってあまり関係がないと思われがちですが、こうした特殊な環境でしか分からない発見は多くあります。今後の宇宙開発によって私たちの生活はより豊かなものになっていくことでしょう。

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