アメリカ・カリフォルニア州のサンディエゴ動物園は、絶滅に瀕しているモウコノウマのクローンを誕生させることに成功しました。
モウコノウマは1879年にモンゴルではじめて発見されましたが、開発や環境の変化によって徐々に個体数が激減し、野生下では絶滅が宣言されたこともありました。
しかし、現在はヨーロッパ各地の動物園に送られていたモウコノウマの子孫を再び集め、計画的に繁殖させて野生に返す取り組みが行われています。
02710137 flickr photo by IAEA Imagebank shared under a Creative Commons (BY-SA) license
こうした保護下での繁殖は、しばしば近交弱勢(きんこうじゃくせい)が問題となります。個体数が少ない場合、遺伝的に近い個体同士の交配が続くと有害な遺伝子が蓄積し、赤ちゃんが早くに死んでしまったり、精子がうまく作られないといった異常が起こりやすくなります。
今年8月に飼育下での絶滅が宣言されたオガサワラシジミも、同様の理由により繁殖に失敗しました。
オガサワラシジミの飼育個体が全滅、日本で初めてチョウが絶滅した可能性
そこで、サンディエゴ動物園は凍結保存していたモウコノウマのDNAを利用し、クローンを作製して代理母馬に出産させました。保存されていたDNAは、1975~1998年まで生きていた個体のもので、サンディエゴ動物園の「冷凍動物園」で凍結保存されていたものです。
このモウコノウマは、今回のプロジェクトに尽力した人物の名前にちなんで「カート」と名付けられました。現在はテキサス州の施設にいますが、繁殖できる年齢になった時点でサンディエゴ動物園に移送される予定です。
研究者らは、このモウコノウマによって失われつつある遺伝的多様性を取り戻し、近交弱勢が緩和されることを期待しています。
現存するすべての馬は、人に飼われていたものの子孫ということになります。