金星の大気にあり得ない量のリン化水素を確認、生命存在の指摘も

イギリス、アメリカ、日本の研究者からなる合同研究チームは、アルマ望遠鏡とジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡による観測によって、金星からリン化水素(ホスフィン)を検出したことを明らかにしました。このリン化水素は、太陽系外惑星における生命存在の指標のひとつと考えられている分子です。

惑星の大気を調べて地球外生命の探査を行う

生命探査は、私たちが宇宙を観測する理由の一つです。しかしながら、どのようにして生命の存在を判断すれば良いのでしょうか。

方法の一つとしては、大気の成分を調べることが挙げられます。一般的な惑星の環境では作られないような分子、言い換えれば、生命活動によって作られるような分子が見つかれば、その惑星に生命が存在するかもしれません。

遠い惑星の大気の成分を調べるには、その星から発せられる電波を調べます。原子や分子は、特定の波長の電波を吸収したり放射したりするので、惑星から発せられる電波を調べれば、その惑星の大気にどのような原子や分子がどれくらい存在するのかを調べることができます。

エピネシス・コラムズ
例えばヘリウムは、太陽の電波を調べることによって発見されました。ヘリウムはギリシャ語で太陽を意味するヘリオス(helios)に由来しており、当初は太陽にしか存在しない元素であると考えられました。

リン化水素は生命活動と関連する分子の一つで、生命が存在する指標の一つとされています。可燃性の有毒ガスで、有機物の分解によって発生し、腐った魚やニンニクに似た匂いがします。

イギリス・カーディフ大学の研究チームは、生命の指標となるリン化水素を太陽系外惑星で探す前に、太陽系の惑星の大気から探して見ることにしました。

金星の大気からあり得ない量のリン化水素を確認

研究チームがハワイにあるジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡を使って金星を観測したところ、なんと波長約1mmの電波でリン化水素の存在が確認されました。さらに研究チームは確認のため、アルマ望遠鏡を使って観測を行いましたが、結果は変わらず、やはり金星からリン化水素が確認され、研究チームはとても驚いたといいます。


Venus – June 20 2016 flickr photo by Kevin M. Gill shared under a Creative Commons (BY) license

検出されたリン化水素の量は、大気の分子10億個に対してたったの20個程度というごく微量でしたが、リン化水素は、金星では作られにくい物質であると考えられています。

金星の大気には酸素が多く存在しているため、リンは水素ではなく酸素と結合する可能性が高く、塩化物イオンなどが大気中に存在している場合には壊れやすいため、金星の大気においてリン化水素が安定して存在するためには、絶えずリン化水素が作られるような”供給メカニズム”があるはずです。

研究チームらは、なぜこれだけの量のリン化水素が金星に存在するのか、金星大気における化学反応、発生している雷や、微小隕石により運ばれた可能性、地表から風によって吹き上げられる量、火山ガスなどから放出される量など、あらゆる可能性を考慮しましたが、せいぜい観測された量の1万分の1程度のリン化水素しか作れないという結論に達しました。

研究チームは、地球上の微生物を参考にして、金星の大気に微生物がいた場合のリン化水素供給量についても見積もりました。地球には、岩石や生物由来の物質からリンを取り出し、リン化水素を排出する微生物が存在します。興味深いことに、もし金星大気にこのような微生物が存在した場合では、リン化水素の量が説明できることが明らかになりました。

生命が生息するには”絶望的”な環境

金星は夜空でもひときわ明るく輝く惑星で、地上に影を作るほどです。これほど明るいのは、地球に近いだけでなく、厚い濃硫酸の雲が太陽の光をよく反射するからです。

金星には二酸化炭素を主体とする分厚い大気があり、気圧はなんと地球の90倍にもなります。大量の二酸化炭素による強力な温室効果により、表面温度はなんと460℃にまで達します。

今回の研究でリン化水素が存在していると考えられた高度50~60km付近の大気は0~30℃程度と、微生物にとっては生息しやすい温度にはなっているものの、この高度には前述にあるような濃硫酸の雲が存在しており、微生物にとってはかなり厳しい環境であると考えられます。

研究チームは、生物由来でない何からの化学反応によってリン化水素が作られている可能性も多いにあるとして、さらなる検証を行っていくです。

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