ゆっくりとしたフォームで投げると打者は振り遅れやすい、名古屋大学

私たちがとっさに判断を行うことができるのは、脳が以前に経験したことや知識に基づいて結果を予測するためだ。特にスポーツでは非常に重要な能力であり、例えば野球,ソフトボールでは投手がボールを投げたあとの約0.5秒という限られた時間のなかで、軌道や速度、変化を正確に見極めなければならない。

ボールを見てから動いたのでは間に合わないため、熟練の打者ほど投球動作から事前に予測を行い、正確なスイングを行うのだ。

名古屋大学大学院教育発達科学研究科の学生らは、予測に伴う影響を確かめるために、投手がボールを投げる映像から、投球動作が速い映像と遅い映像をそれぞれ作成し、ソフトボール経験者を対象に映像をみせて球速を予測、またはスイングを行わせた。


名古屋大学 研究教育成果情報より
実験で使用されたソフトボール投手の投球映像。実験では投球動作を最大で20%増減させている。投げられたボールは0.5秒後に手元に到達する。

実験の結果、投球動作だけの映像(画像のa~dまで)を比べて見せた場合、投球動作が遅いほど球速が遅いと予測し、投球動作が速いほど球速が速いと予測する傾向にあることが分かった。驚くべきことに、通常の映像と比較して0.15秒の差であっても予測に顕著な違いが生じることから、打者は投球動作のわずかな違いをも見極めて予測を行っているという。

また、投球動作の速さだけが異なるフルバージョンの映像(画像のa~fまで)を比べて見せた場合でも、球速は同じにも関わらず、投球動作が速い場合は球速が速く、投球動作が遅い場合では球速が遅いと評価する傾向にあったという。

映像を見ながら実際にスイングをしてもらう実験では、投球動作が遅い場合では振り遅れ、投球動作が速い場合では早振りの傾向がみられた。タイミングの誤差は100分の1~2秒ほどと非常にわずかなものであったが、厳密なタイミング調整を要求される打者にとっては非常に重要だ。

投球動作が遅く、球速が速いほど効果的

興味深いことに、投球動作が速く球速が遅い場合と比べ、投球動作が遅く球速が速い方が2倍ほど大きなタイミングの誤差が生じていた。どうやら打者にとっては予測よりも速い場合の方が、タイミング調節が難しいようだ。

ただし、これについては個人差もみられ、速い投球動作から遅い球が投げられる方がより大きい誤差が生じる打者も少数ながら観察されたという。

野球やソフトボールの投球動作は文字通り、私たちの”予想以上”に、打者に大きな影響を与えているようだ。もちろん、投球フォームは最適な投球を行うためのものであり、変えようのないものかもしれないが、技術だけでは勝負に勝ち得ないことを今回の研究は示唆している。

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