高圧条件下で新しいタイプの水が発見される、東京大学らの合同研究グループ

高圧条件下で新しいタイプの水が発見される、東京大学らの合同研究グループ

水はこの地球上においてありふれた存在であるが、実は特異な性質を示す奇妙な液体だ。水の性質には未だに多くの秘密が隠されている。

参考記事
「異常液体」である水の性質とは?

東京大学、東北大学、北海道大学の合同研究チームはこのほど、これまで知られていなかった新しいタイプの水を発見した。この水は通常の水と混ざり合わず、異なる密度と異なる構造を持つという。

研究チームらは、室温が-20℃に保たれた低温室内で、水に248MPaという高圧を加えることで作られる「氷Ⅲ」を観察した。実は、氷にはいくつかの種類が知られており、さまざまな温度や圧力の条件の下で17種類ほどが確認されている。

私たちが普段利用している氷は氷Ⅰと呼ばれるもので、発見された順番に氷Ⅱ、氷Ⅲ・・・とローマ数字が付与されている。今回の実験で使用されたのは、三番目に発見された氷Ⅲだ。

氷の表面は、私たちの想像を超えるような奇妙な現象が起きる舞台として知られている。例えば、氷の表面では0℃以下であっても表面融解という現象がみられ、融解層と呼ばれる特殊な層が形成されている。氷の滑りやすいという”特殊”な性質はこの融解層によるものだ。研究者らは、加圧・減圧したときに氷Ⅲが成長・融解する表面の様子を顕微鏡で観察した。

高圧下で氷Ⅲ表面に新しい水が生成する

この観察の結果、加圧して氷を成長させたときには氷Ⅲと水の境界で周囲の水とは異なる液体の膜が形成され、減圧して氷を融解させたときには周囲の水とは異なる微小な液滴が形成されることを確認した。これは、水-氷Ⅲの界面にこれまで知られていなかった新しいタイプの水が存在する可能性を示したものだ。

詳しい解析の結果、この水は周囲の水と比較して高密度であり、産業技術総合研究所での計算機シミュレーションの結果、氷Ⅲに近い構造をとることが示唆されたという。

また、この新しい水は加圧して氷を成長させたときに均質な液膜としても存在し、加圧をやめると不均質化して迷路のような形態を示すことが確認された。この迷路のような模様は両連続的パターンと呼ばれるもので、本来は互いに混ざり合わない異なる2つの流体が、何らかの条件により混ざり合った状態から2つの流体に分かれる際にみられるパターンであるという。

つまりこの新しいタイプの水は、通常の水とは混ざり合わないことを示しており、これらの水は互いに構造が異なることを示唆されたことになる。


産総研のプレスリリースより。
(A)加圧により水中で成長する氷Ⅲの顕微鏡像。
(B)図Aにあるa,bの拡大図。迷路状の模様(両連続的パターン)が確認できる。
(C)新しい水の形態の模式図。

これまで、水と氷の界面では、ナノメートル単位の厚みで氷から水へと連続的に変化していると考えられてきた。しかし、今回の研究ではその通説を覆し、水に対して明確な界面を形成する高密度の液体がマイクロメートル単位の厚みで存在するという新しい水-氷界面の描像を明らかにした。

さらに研究チームは25℃、954MPaで結晶化する氷Ⅵと水の界面においても高密度な新しい水が生成することを明らかにした。これは、水-氷界面で高密度な液体が形成される現象は普遍的なものであることを示唆している。

論文の特筆者は、水の形態変化は自然現象を大きく左右するものであり、水の性質を明らかにすることは極めて重要なことであると述べており、太陽系天体内部に存在する氷は高圧状態で形成されるため、天体の形成過程の解明にも役立つ可能性があると説明している。