ジンベエザメの口から新種のヨコエビ「ジンベエドロノミ」が発見される

2019年11月13日


Crispychipp [CC BY-SA 4.0] via Wiki Commons
ヨコエビの一種(Bellorchestia Quoyana)。

生物の世界では、予想もしなかった場所から新種が発見されることも珍しくない。例えば誰も使っていない古井戸から突然、新種のクラゲが発生したり、NASAの宇宙センターにある滅菌されたクリーンルームから新種のバクテリアが発生されたこともある。今回も奇妙な場所から新種の生物が発見された。なんと、ジンベエザメの口の中だ。

広島大学大学院教育学科研究科の冨川 光准教授は、沖縄美ら海水族館とノルウェーのトロムソ大学との共同研究で、世界最大の魚類として知られるジンベエザメの口内から新種のヨコエビを発見した。この論文は2019年10月25日付で日本動物分類学会英文誌『Species Diversity』で公開されている。

ヨコエビとはどんな生物なのか?

ヨコエビとはエビ綱ヨコエビ目に分類される小型の甲殻類で、エビ目に分類されるエビとは異なる。体長はほとんどが1cm未満で、最小種では1mm程度と非常に小さいが、深海に生息するダイダラボッチ(Alicella gigantea)と呼ばれるヨコエビは体長34cmにも達した記録がある。このヨコエビという名称は、体の左右が平らになっていて、よく横倒しになっていることが多いからであるという。
藻類や懸濁物(マリンスノー)、生物の死骸などを食べて生活しており、海域だけでなく汽水域や淡水域で見られるほか、ハマトビムシ科に属する一部のヨコエビは陸上にも生息している。

新しく発見されたジンベエドロノミ

今回、ジンベエザメの口から発見されたジンベエドロノミ(学名:Podocerus jinbe)という新種のヨコエビは体長5mm程度で、体色は茶色をしており、脚にはエサとなる有機懸濁物を捕らえるための多くの毛が生えているという。沖縄美ら海水族館からの連絡を受け、ジンベエザメを調べたところ、このヨコエビが新種であることが確認されたという。


Ko Tomikawa・Makio Yanagisawa・Takuo Higashiji・Nagisa Yano・Wim Vader (2019),A New Species of Podocerus (Crustacea: Amphipoda:Podoceridae) Associated with the Whale Shark Rhincodon typus, Species Diversity, 24, 209–216.

ジンベエザメの口から発見されたヨコエビは、もちろんこのジンベエドロノミが初めてであったが、どうやら寄生しているわけではないという。発見した冨川教授は、ジンベエザメの口内では呼吸に必要な新鮮な海水が定期的に取り込まれ、ジンベエザメが食事をする際にエサとなるプランクトンが入ってくるうえに天敵もいないことから、このジンベエドロノミが生息するうえで非常に良好な生育環境であった可能性があると指摘している。ジンベエザメの口からは、なんと約1,000匹ものジンベエドロノミが見つかったという。

ヨコエビは現在までに海洋に生息するものだけで少なくとも7,400種以上が確認されており、非常に多様性がある生物として知られている。今回、新種のヨコエビを発見した広島大学の冨川光 准教授は、2017年にも水深300mの深海に生息するトヨタマミコヨコエビ(学名:Nicippe recticaudata)というヨコエビを発見しており、日本近海にはまだまだ未知のヨコエビが生息していると考えられている。今後の発見にも期待したい。

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