国内で最高額の保険適用治療薬「ゾルゲンスマ」、1回でなんと1億6,700万円

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ゾルゲンスマ 製品基本情報より Ⓒノバルティス ファーマ

日本における健康保険制度を審議する中央社会保険医療協議会は、「世界一高額な治療薬」といわれている難病治療薬「ゾルゲンスマ」を保険適用の対象とすることを承認した。この治療薬は1回あたり1億6,700万円で、これまで最高額であった白血病治療薬「キムリア」の3,349万円を大きく上回り、国内で保険が適用されている薬で最も高額となる。

ゾルゲンスマはどんな治療に使われるのか?

ゾルゲンスマは脊髄性筋萎縮症(SMA)と呼ばれる難病の治療に用いられる薬品だ。この病気は、脊髄にある筋肉を動かすための神経細胞に異常が生じ、全身の筋力低下や筋委縮が進行していく遺伝性疾患である。

宇宙物理学者である「車椅子の天才」、スティーヴン・ホーキングが罹患していた筋委縮性脊索硬化症(ALS)と同じ、進行性の運動ニューロン病の一種であり、徐々に筋力が低下して呼吸にも影響を及ぼすようになり、命に関わることも多い。2018年末までに確認されている患者は全国で858人であり、遺伝性疾患による乳幼児のおもな死亡原因とされている。

ゾルゲンスマはどのように効果を発揮するのか?

脊髄性筋萎縮症は遺伝子疾患であり、第5染色体に存在する運動神経細胞生存遺伝子(SMN遺伝子)の異常が原因とされている。父親から受け継いだSMN遺伝子と母親から受け継いだSMN遺伝子が共に変異を起こしている場合、子は脊髄性筋萎縮症を発症してしまうのだ。

数十年前まで、このような遺伝子疾患は有効な治療法がないものとされてきた。しかし遺伝子治療技術の確立によって、現在では脊髄性筋萎縮症をはじめとする多くの遺伝子疾患に対して研究が進められている。

ゾルゲンスマは、そんな先進的医療である遺伝子治療技術によって開発された治療薬の一つである。アデノ随伴ウイルス9型(AAV9)を利用し、ウイルスが細胞に遺伝子を導入する仕組みを使って、変異が起きているSMN遺伝子の機能欠損を補うのだ。対象となる患者は2歳未満で、かつAAV9抗体(遺伝子治療に使用されるウイルスの抗体)があまりない患者に使用可能で、1回の点滴静脈注射で治療が完了し、生涯に渡って効果が持続する。

確かに大金ではあるが、患者側の自己負担は難病や小児への医療費に対する、国や自治体からの助成があるため、ほとんどかからないそうだ。子どもの大切な命を、経済的な理由によって諦めることのない社会になることを願う。