侵略的外来種のクシクラゲ、エサが無くなると同種の赤ちゃんを食べて生き残る

2020年05月21日

Mnemiopsis leidyi (Comb jelly)
Mnemiopsis leidyi (Comb jelly) flickr photo by mark6mauno shared under a Creative Commons (BY-SA) license

南デンマーク大学をはじめとする研究者らは、さまざまな海域に侵入し、生態系に深刻な影響を与えるクシクラゲの一種が、エサが無くなると自種の赤ちゃんを食べることによって生き残ることを突き止め、今年5月に生物学のオープンアクセス・ジャーナル『Communications Biology』で発表した。

クシクラゲは有櫛(ゆうしつ)動物門に属する生物であり、刺胞動物門に属するクラゲとは異なるグループの生物だ。基本的に毒針(刺胞)は持たず、繊毛が数万本束ねられた櫛板(くしいた)を波打たせるように動かして遊泳するが、これが構造色によって虹色に輝くため大変美しく見える。
一般にクラゲのような刺胞を持たないが、なかにはクラゲを食べて刺胞を取り入れ、自らの武器とする「盗刺胞」を行うものもいる。

参考記事 – 食べた相手の武器を再利用する、アオミノウミウシの「盗刺胞」とは?

侵略的外来種、ムネミオプシス・レイディ

体長10cmほどのクシクラゲであるムネミオプシス・レイディ(Mnemiopsis leidyi)も、その例に漏れず非常に美しい生物だ。このような虹色のクシクラゲが大量に海を漂う光景はなんとも幻想的なように思われるかもしれないが、他の生物にとってはまるで地獄のような光景だろう。

ムネミオプシス・レイディは非常に食欲が旺盛で、動物プランクトンや小魚を捕食する肉食性だ。サンゴ礁が小魚を呼び寄せ、また小魚を食べる魚を呼び、さらにそれを食べる大きな魚を呼び寄せる――というような、豊かな生態系を作り出すメカニズムとは真逆に、ムネミオプシス・レイディはその海域の動物プランクトンや小魚を食らい尽くしながら、一気に増殖して大量発生する。そうなると当然、それらを食べる魚もいなくなり、さらに大きな魚もいなくなってしまう。

このような理由から、ムネミオプシス・レイディは生態系に深刻な影響を与える生物として知られており、国際自然保護連合(IUCN)によって世界の侵略的外来種ワースト100にも選ばれている。多国間を行き来する大型船舶のバラスト水に混入して世界各地の海に侵入し、塩分や温度に対する高い耐性と、オスとメス両方の性質を持つ雌雄同体で、相手がいなくても繁殖できるという特性を生かして大量に発生するのだ。

研究者らの間で長らく疑問とされてきたのは、ムネミオプシス・レイディがどのように個体群を維持しているかであった。このクシクラゲの個体群は急激な増減を繰り返すことが知られていたが、食べるエサが少ない状態、あるいはエサが少ない海域においても、なぜムネミオプシス・レイディは急速な個体群成長を維持することができるのか――

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DSC_0307 flickr photo by tracie7779 shared under a Creative Commons (BY-SA) license

南デンマーク大学の研究者らは、ドイツのキール峡湾でムネミオプシス・レイディの個体を採取し、観察実験を行った。その結果、このクシクラゲのエサとなるカイアシ類が不足すると、その直後にムネミオプシス・レイディの幼生(赤ちゃん)の個体数が急速に減少したのだ。実験室内においてさらに詳しく調べると、ムネミオプシス・レイディはエサとなるカイアシ類がいなくなると、自種の幼生を食べる共食いを行うことが明らかになった。

共食いは”飢餓作戦”の要

研究者らは、このクシクラゲはまず大量に増殖し、エサをあえて全滅させてから他の捕食者との競争に勝ち、しばらくエサが不足する期間に備えて栄養素を蓄えるために共食いに移行すると推測している。

ムネミオプシス・レイディは生態系を破壊するだけでなく、漁獲量を低下させ、漁網に大量にかかるといった漁業にも大きな影響をもたらす。研究チームらは今回の研究について、侵入種であるムネミオプシス・レイディの個体群を制御して、海の生態系や私たちの生活を守ることに役立ち、さらには動物における特殊な生存戦略である「共食い」の進化的起源を明らかにするものであると述べている。

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