新種の冬虫夏草「クサイロコメツキムシタケ」を発見、栃木県立博物館

2020年02月16日


栃木県HP 報道発表資料より

冬虫夏草は菌類(きのこ)の一種だ。冬眠している虫に寄生して、虫の養分を吸収しながら成長し、暖かくなると子実体(きのこの部分)を出すという奇妙な生態を有している。

”冬虫夏草”という名前も、冬の間は虫の姿で過ごし、夏になると草の姿をすると信じられてきたことに由来している。きのこ特有の傘が無いことから、昔の人々がこれを”草”だと考えていたとしても不思議ではないだろう。

日本は冬虫夏草の宝庫であり、現在まで確認されている約500種のうち、実に400種もの冬虫夏草が日本に分布している。栃木県立博物館の学芸嘱託員・山本 航平氏は、栃木県内における冬虫夏草の多様性を調べるために2017年からフィールドワークを行っていた。その調査の一環で、山本氏は宇都宮市内で”ある特徴”をもった冬虫夏草を発見したという。コメツキムシの幼虫やサナギに寄生していたその冬虫夏草は、子実体の部分が珍しい草色を帯びていたのだ。

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Click beetle / Elateridae flickr photo by TANAKA Juuyoh (田中十洋) shared under a Creative Commons (BY) license
コメツキムシはコメツキムシ科に属する昆虫の総称で、全世界では1万種以上も確認されている。”コメツキ”は「米につく虫」という意味ではなく、ひっくり返ってしまった時に勢いよく跳躍して元に戻る様子や、その音が”米搗き”に似ることから名付けられた。英名の”click beetle”もこの動作に由来する。

この冬虫夏草を、株式会社北研、神奈川県立生命の星・地球博物館から成る研究グループが顕微鏡観察や培養試験、遺伝子解析を行ったところ、これが新種であることが明らかになった。後に、この冬虫夏草は子実体の特徴的な草色と、コメツキムシの仲間に寄生することから「クサイロコメツキムシタケ」(Metarhizium brachyspermum)と名付けられた。この発見は、2020年1月に発行された日本菌学会発行の国際学術誌である『Mycoscience』に掲載されている。


Kohei Yamamoto, Muneyuki Ohmae, Takamichi Orihara (2020).brachyspermum sp. nov. (Clavicipitaceae), a new species parasitic on Elateridae from Japan, Mycoscience、61 巻 1 号、pp. 37-42


Kohei Yamamoto, Muneyuki Ohmae, Takamichi Orihara (2020).brachyspermum sp. nov. (Clavicipitaceae), a new species parasitic on Elateridae from Japan, Mycoscience、61 巻 1 号、pp. 37-42

現在、栃木県立博物館ではエントランスホールにて2020年4月5日まで、今回発見されたクサイロコメツキムシタケを展示しているという。冬虫夏草とはそもそもどのようなものなのか、その新種がどのように発見されたのかなど詳しく知ることができるだろう。興味のある方はぜひ足を運んでみよう。

日本には数多くの種類が存在するものの、日常生活では滅多に見ることのない冬虫夏草。このクサイロコメツキムシタケは、宇都宮市内の住宅地に近い雑木林から発見されたそうだ。また、2017年から行われてきたこの調査では、新種が発見されただけでなく、栃木県内では報告例のなかった冬虫夏草が30~40種ほど確認されたという。

街からちょっと自然に足を踏み込むだけで、自分にとっても、そして”学術的”にも、新しい発見があるかもしれない。

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