北に生息するカブトムシほど成長が早い、山口大学の研究

Japanese rhinoceros beetle (Trypoxylus dichotomus)
Japanese rhinoceros beetle (Trypoxylus dichotomus) flickr photo by harum.koh shared under a Creative Commons (BY-SA) license

カブトムシは夏の終わりにふ化し、幼虫は腐葉土やたい肥を食べて成長しながら翌年の初夏に蛹(さなぎ)になり、7月頃に成虫へと羽化する。幼虫の成長はとても早く、ふ化した幼虫は2回の脱皮を経て、2~3か月の間に体重は1,000倍にもなるという。

山口大学の研究者らは、日本各地から集めたカブトムシを同一の条件で飼育した。その結果、最終的な体重はどれもそれほど変わらないものの、沖縄や台湾などの南方に生息するカブトムシでは本州のものと比べて成長速度がずっと遅いことに気付いたという。

研究者らは幼虫の成長速度が緯度と関係しているのではないかという仮説を立て、実験室内で調べることにした。まずはじめに研究者らは青森から台湾にかけての12地域から成虫を採集して卵を得たあと、ふ化した幼虫をそれぞれ25℃という一定の温度で管理し、同じエサを食べさせて5~10日おきに体重を計測した。その結果、研究者らの予想通り、カブトムシは北方に生息するものほど早く成長することが明らかになったという。

論文の著者は、北日本では冬の長いあいだ地面が雪に覆われ、幼虫が成長できないために、冬が訪れる前にいち早く大きくなり、冬の厳しい寒さを乗り越える準備をしているものと推測している。一方で、沖縄や台湾などに生息するカブトムシでは、冬に備えて急ぐ必要もないため、無理なくゆっくりと成長するように進化したというのだ。

一方で、北海道に生息するカブトムシは意外な結果

研究者らはさらに、北海道に生息するカブトムシの成長速度についても調べた。北海道に生息するカブトムシはもともと、自然に分布していたものではなく、50年以上前に本州から移入されたものだ。

調査の結果、北海道のカブトムシは緯度から予想される成長速度よりもずっと遅いことが明らかになった。どうやら、北海道のカブトムシは厳しい気候に適応しているわけではないようだ。

さらに研究者らは、幼虫がどのようにして素早く成長をしているのかを調べた。幼虫が早く成長するためには、理論的には「多くのエサを摂取する」か、あるいは「摂取したエサを効率よく体重に変換する」かという理由のどちらか、あるいは両方しかない。研究者らは低緯度、中緯度、高緯度に生息するカブトムシに分けて、成長期の5日間で食べたエサの量と、その変換効率を厳密にコントロールしたうえで計測を行った。

その結果、低緯度と中緯度の成長速度の違いは「摂取したエサの量」と「体重への変換効率」の両方で説明できるのに対し、中緯度と高緯度の成長速度の違いは「摂取したエサの量」だけで説明されたという。

つまり、北にいくほど「摂取したエサの量」と「体重への変換効率」はどちらも上昇するが、「体重への変換効率」の上昇だけは中緯度で止まっていたのだ。どうやら、変換効率をあげることは生理的なコストや、別の制約が存在している可能性が高く、一定の上限が定められているようだ。

研究者らは今後、この変換効率の違いをもたらす生理的なメカニズムの解明を進めていくという。