地震発生時の正確なマグニチュード予測は不可能?東京大学の研究

緊急地震速報は、全国に設置された約690か所の気象庁の地震計・震度計と、約970か所の防災科学技術研究所の地震観測網、合わせて約1,660か所もの観測点(2019年7月時点)を利用して、震源やマグニチュードを瞬時に推定して情報を発信する技術だ。
地震波の伝わる速度は数km/sであるが、情報の発信は原理的に光の速さ(秒速30万km/s)で伝えることができるため、緊急地震速報では地震が到達する数秒~数十秒のあいだに多くの人々が地震の発生を知ることができるのだ。

この緊急地震速報を可能にしているのは、少ない観測点のデータを瞬時に解析するような手法が活用されているからだ。しかし、いまだに地震発生時点におけるマグニチュードの即時推定は実現できておらず、大きな誤差が伴うのが現状だ。
これはいわば、イントロクイズのように、少ない情報からできるだけ短い時間に正確な答えを出すようなもので、全く違う曲であるにも関わらず、曲の冒頭部分のメロディーがそっくりであることもある。

東京大学の地球惑星科学研究者である井出 哲教授は、茨城県沖で発生したマグニチュードが全く異なる2つの地震が、同じように揺れ始めていることに気付いた。
これが偶然であるかどうかを調べるために、井出教授は北海道から関東までにある千島日本海溝の約1,100kmにわたり、日本列島方向へ250kmの解析範囲を設けて、この範囲内に発生した深さ70kmより浅いマグニチュード4.5以上の地震を観測し、気象庁の地震カタログで同じ範囲にあるマグニチュード2以上4未満の小地震と比較した。

解析範囲で起きた地震は約2,500個、気象庁の地震カタログにあった小地震の数は約10万個にものぼり、大小の地震ペアは約34万ペアにもなった。このすべてのペアに対して詳しく解析すると、マグニチュードが大きく異なる地震であっても、震源周辺の観測点で同時に同じような揺れが観測されたペアが80例、よく似た揺れが観測されたペアが390例も見つかったのだ。

イントロクイズでいえば、曲の冒頭部分がほとんど同じ曲がいくつも存在しているようなもので、限られた時間内で解答することが不可能な問題がいくつも存在することを意味しており、緊急地震速報の限界を示唆するものだ。
しかしながら、実際に重要なのは私たちの危機・防災意識だ。地震速報におけるマグニチュードの推定値によって行動を変えるのでは、防げるはずの被害を受けてしまうことになりかねない。日頃からの備えも忘れずに、どんな場所や状況でも身の安全を確保できるように確認しておこう。