どんな抗菌薬も通用しない”悪夢の細菌”に効果を発揮する化学物質を発見、名古屋大学

最後の切り札さえ通用しない”悪夢の細菌”に効果を発揮する化学物質を発見

このほど、名古屋大学の研究グループらは抗菌薬が効きにくい耐性菌に有効な物質を発見した。

抗菌薬は微生物の発育を抑えたり、死滅させる作用がある薬だ。ペニシリンの発見にはじまり、私たちは細菌感染症をほとんど克服したが、その一方で抗菌薬の乱用が問題となってきた。
たとえば、風邪の治療にも抗菌薬が処方されることがあるが、風邪がウイルス性のものである場合はほとんど意味がない。細菌性かウイルス性か断定が難しい場合や、二次性の細菌感染によって重症化することを防ぐために”とりあえず”処方するといった、抗菌薬の安易な使用が増えているのだ。

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抗菌薬による薬剤耐性菌の発生

こうした抗菌薬の乱用によって、近年新たに問題視されているのが薬剤耐性菌だ。薬剤耐性菌は抗菌薬に対しても耐性を示すため、感染症の治療が困難となる。本来こうした薬剤耐性菌は他の菌との競争に弱いことが多く、ひっそりと暮らしているが、抗菌薬によって他の菌が減少すると増殖する機会を得る。

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また、抗菌薬そのものに曝されたり、他の薬剤耐性菌のDNAを取り込むなどして、もともとは薬剤耐性を持っていなかった細菌が新たに耐性を獲得することもある。こうして出現した薬剤耐性菌は、さらにさまざまな薬剤にも耐性(多剤耐性)を獲得し、世界中で大きな問題となっているのだ。

医療現場最後の切り札「カルバペネム」が通用しない

こうした状況の中で、「最後の切り札」とされてきたのがカルバペネムと呼ばれる抗菌薬だ。この系統の抗菌薬は、薬剤耐性を持つさまざまな細菌に対して唯一、効果を発揮する。しかし、1993年にはついにカルバペネム系抗菌薬にまで耐性を示す”悪夢の細菌”、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)が発見され、私たちは人類史において再び、細菌感染の脅威に直面している。

名古屋大学の研究チームは、カルバペネム耐性菌が産生するカルバペネマーゼに注目した。このカルバペネマーゼはカルバペネムを加水分解する働きがあるが、研究チームらはカルバペネムとsulfamoyl heteroarylcarboxylic acids (SHCs)を同時に投与することで、カルバペネムの有効性を回復させることに成功したという。

抗菌薬の開発と細菌の耐性獲得は終わりのない”いたちごっこ”だ。ここ20年近くは抗菌薬の開発が滞っており、人類は劣勢に立たされているが、今回の発見はこうした状況を覆す大きな一歩となるだろう。