患者の精液から新型コロナウイルスの陽性反応、精巣内に長期間潜伏する可能性も

2020年5月11日

Coronavirus
Coronavirus flickr photo by Yu. Samoilov shared under a Creative Commons (BY) license

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はおもに飛沫感染や接触感染などにより伝染するとされているが、急速に感染が拡大した経緯を調べるため、そして今後の感染拡大を防止するためにあらゆる感染経路や感染メカニズムの特定・解明が進められている。

中国河南省にある商丘(しょうきゅう)市立医院の研究チームは、新型コロナウイルス感染症の男性患者の精液から陽性反応が検出されたことを今月7日、医学専門誌である『JAMA Network Open』において発表した。これまでの研究で、便や尿からも検出されることは知られていたが、精液中から検出された報告例は今回が初めてとなる。

中国河南省の東側、商丘市において新型コロナウイルス患者の治療に唯一指定されている商丘市立医院の研究チームは、2020年1月26日~2月16日までの間に新型コロナウイルスに感染していた15歳~50歳代までの男性患者を対象に、精液中にウイルスが存在するかどうかを調べるための検査を実施した。

新型コロナウイルス感染症の男性患者50名のうち、12名の患者は勃起不全や昏睡状態、あるいは死亡したためにサンプル提供ができなかったため、調査対象者は38名となった。このうち23名の患者は回復期の状態で、残り15名の患者は感染の急性期にあったという。

提供されたサンプルから研究者らが検査を行ったところ、6名のサンプルから新型コロナウイルスの陽性反応が検出された。このうち2名は回復期の患者のもので、4名が急性期の患者であったという。陽性反応が検出された患者と陰性であった患者との間に年齢や病歴、発症後の日数などによる有意差はみられなかった。

新型コロナウイルスは性感染するのか?

今回の研究結果は、必ずしも性的な接触により感染が成立することを示したものではない。この研究自体がそもそも小規模なものであり、検査の性質上、あくまでウイルスの遺伝物質が検出されたに過ぎない。そのウイルスが感染能力を維持しているかどうかは別の問題だ。

確かに、新型コロナウイルスなどの上気道感染を引き起こすウイルスが性器の粘膜を通じて感染するのかどうかは興味深いが、そもそも性行為自体が濃厚接触に該当するため、私たちが心配すべきであるのは性的接触による感染よりも、飛沫感染や接触感染だろう。

ウイルスが免疫特権により生存する可能性

研究者らが懸念しているのは、免疫特権部位による免疫機構の回避だ。ヒトの脳や眼球、精巣などは、免疫反応が特殊に制御され、拒絶反応などが起きにくい部位がある。これを免疫特権部位というが、一部のウイルスではこの免疫特権部位に逃げ込んで、長期間にわたって”生存”することができる。

参考記事 – 移植しても拒絶反応が起きにくい「免疫特権」とは?

例えばエボラウイルスだ。ある患者は、エボラ出血熱から回復した3か月後にブドウ膜炎の症状を訴え、眼からウイルスが検出された。また、精液からは最長で7か月もの間、ウイルスが感染能力を保ったまま潜伏し、症状を再発させたり、感染させたりすることが明らかになっている。

もし今回の新型コロナウイルスにおいても同様の性質が認められる場合、たとえ回復後の患者であっても性行為によって感染する可能性があるのだ。研究チームは、もし将来的に性感染が証明された場合、コンドームなどの予防策を検討する必要があるかもしれないと指摘している。

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