なぜ風邪とインフルエンザは同時にかからないのか?

2020年1月22日

風邪とインフルエンザの同時感染

風邪インフルエンザ同時に感染するという話を聞いたことはあるだろうか?風邪だけでもつらいものだが、さらにインフルエンザも同時に感染すると考えるとたいへん恐ろしいことだ。
風邪で身体が弱っている以上、インフルエンザなどに感染しやすくなっていても不思議ではないが、実際にはあまり起きていないように思える。

風邪とインフルエンザはどのような感染症なのか?

そもそも風邪は、喉の痛みや咳、鼻水や頭痛などを引き起こすさまざまな種類のウイルスまたは細菌による感染症であり、特定の原因ウイルス、または細菌が存在するわけではない。広義においてはインフルエンザも風邪に含まれるが、一般的には風邪とは区別されている。
原因の7~8割がウイルスによる感染が原因であり、おもに100種類以上もの亜型をもつライノウイルスが原因の3割ほどを占め、続いてコロナウイルスが1割ほど、残りがRSウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルスなどによって引き起こされる。

一方で、インフルエンザはインフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症で、喉の痛みやせき、鼻水などの風邪にもみられる症状に加え、強い悪寒や発熱、筋肉痛や関節痛などの症状が現れる。

「風邪とインフルエンザが同時に感染する」ことはあるのか?

結論から言えば、風邪とインフルエンザは同時に感染することがあるものの、恐らくほとんどの人はあまり聞いたことが無いだろう。もちろん、一般的にインフルエンザの症状は風邪の症状よりも重いため、インフルエンザに感染している状態では風邪をひいても分からないということもあるだろうが、それだけではない。実は、風邪とインフルエンザが同時に感染しにくいことはこれまでの研究から明らかになっている。

風邪とインフルエンザは同時に感染しにくい

グラスゴー大学のウイルス研究センターをはじめとする合同研究チームらは、36,157人の急性呼吸器疾患(風邪やインフルエンザだけでなく肺炎や気管支炎などを含む)の患者を対象に、44,230件の症例について11種類のウイルス検査を行った。
その結果、約35%に相当する15,302件が風邪の原因ウイルスまたはインフルエンザウイルスに対して陽性反応を示し、このうちさらに約8%に相当する1,247人の患者は複数のウイルスに対して陽性反応があったという。

これらのデータを詳しく解析すると、風邪ウイルスとインフルエンザは相互に作用して、一方を発症している場合ではもう一方が発症しにくい傾向が確認されたという。

特にA型インフルエンザウイルスと風邪の主な原因となるライノウイルスでは最も顕著に相互作用が確認された。A型インフルエンザに感染した患者は、他のウイルスに感染している患者よりもライノウイルスに感染する確率が約70%も低くなったという。

なぜ風邪とインフルエンザは同時に感染しにくいのか?

研究チームらは、これらのウイルス同士が呼吸器内において競合しているものとみている。風邪のウイルスとインフルエンザウイルスは、いずれも呼吸器内の細胞を利用して増殖する。一方のウイルスが呼吸器内で増殖していると、別のウイルスが増殖するために利用できる細胞は少なくなるのだ。

特に増殖スピードの異なる風邪ウイルスとインフルエンザウイルスが競合する場合は顕著で、インフルエンザウイルスの高い増殖力によって、風邪のウイルスが”締め出される”かたちとなって、風邪に感染しにくくなると考えられる。さらに、この傾向は個体内だけでなく集団においてもみられ、インフルエンザが流行している集団や時期では、風邪の患者が減少する傾向にあるという。

また、論文の特筆者はある感染症に罹患している場合では、対抗しようとして免疫システムを活発化させるため、他の感染症にかかりにくい状況になっているかもしれないと指摘している。これらの研究成果は『米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)』において2019年12月付で掲載されている。

風邪とインフルエンザ、いずれも予防することが大切

同時に感染しにくいからといって、安心することはできない。むしろ同時感染よりも、同シーズンに風邪とインフルエンザの両方に感染してしまう方が身体的、精神的、そして経済的にもダメージが大きくなるだろう。
風邪とインフルエンザが冬に流行する主な原因は、乾燥と気温によるものだ。風邪とインフルエンザの両方をしっかりと予防しよう。

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