チンパンジーもリズムに”乗る”、京都大学の研究

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tt2 flickr photo by Junk Food Monkey shared under a Creative Commons (BY-ND) license

いい音楽を聴くと、ついついリズムに合わせて体を動かしたくなるが、どうやらこれはチンパンジーにとっても同じらしい。世界中には古くから伝わる様々な”踊り”が存在するが、それはもっと”原始的な本能”によってもたらされているのかもしれない。

音楽に合わせて身体を動かす――私たちにとってはありふれた”現象”だが、その進化的起源はよく分かっていない。オウムなどのコミュニケーション能力の高い動物が、リズムに合わせてダンスをすることはよく知られている。もちろんヒトにおいても、1歳にも満たない幼児がリズムに合わせて身体を動かすことから、進化の過程において重要な役割を果たしているという主張がある一方、単純に他の能力を獲得した際の副産物に過ぎず、進化的な意味はないと考える研究者も少なくない。

京都大学霊長類研究所の服部 裕子助教と友永 雅己教授は、系統発生的にヒトに最も近い種のひとつであるチンパンジーを対象に、リズムと身体運動の関係性について調べた。

研究チームは8ビートのリズム音を作成し、7頭のチンパンジーにそれぞれ聞かせてその反応を調べた。その結果、すべてのチンパンジーにおいて体のリズミカルな揺れや頭の振り、拍手や発声、足踏みなどが観察されたという。興味深いことに、メスよりもオスの方がこうした反応が大きく、リズム運動の時間や発声の頻度はオスの方が大きかったという。

チンパンジーはオスが協力して縄張りを守るが、音を使ったコミュニケーションではオス同士の方がより頻繁に行われる。今回の研究によって、オスは音に対して敏感に反応するように進化したことで、他のオスとの音声コミュニケーションを発達させていったと示唆される。

ただし、ヒトでは顕著な男女差は見られないため、こうした違いはチンパンジーがヒトとの共通祖先から分岐した後に独自に進化させたものであると考えられるという。

研究チームはさらに、最も音に対して反応が大きかった1頭のオスの個体を対象に、異なるテンポのリズム音を聞かせてその反応を観察した。すると、テンポが速いリズム音ではリズム運動が速く、ゆっくりなリズム音ではリズム運動が遅くなることが確認された。

また、音声を流しているときは、再生していない場合に比べてより音源に近づく傾向もみられたという。これはチンパンジーが自ら音声の刺激を得ようとしているものと考えられるという。

しかし、今回の研究ではリズムの構造を崩して特定のリズムが判別できない音刺激においてもリズム運動の誘発が見られたという。研究チームは今後、音のどのような要素が、チンパンジーたちのリズム運動を誘発させているのかを調べ、最終的にはヒトが音楽を発達させてきた進化的背景を明らかにしていくという。