噛むことをイメージするだけで脳血流が増加する可能性、東京都健康長寿医療センター研究所

2020年1月17日

噛むことで脳血流が増加

よく噛んで食べることは、消化を助けるだけでなく脳にも良いことが近年の研究からも明らかになっている。噛むことによって、脳の血流量が増加するからだ。

特に高齢者における認知機能の低下は、脳の血流量が低下することが一因であることが知られているため、よく噛んで食べることは認知機能の低下を防ぐうえで非常に重要であると考えられている。しかし、よく噛むことによってなぜ血流量が増加するのかというメカニズムは、これまでよく分かっていなかった。

東京都健康長寿医療センター研究所の堀田 晴美研究部長らの研究グループは、「よく噛む」ことによって認知機能に重要な役割を果たす大脳のマイネルト神経が活性化され、大脳皮質の血流量を著しく増加させることを明らかにした。この論文は、脳循環代謝の国際ジャーナル『Journal of Cerebral Blood Flow and Metabolism』に2019年12月27日付けで掲載されている。

マイネルト神経は大脳皮質の血流量調整および認知機能に重要な役割を果たす神経で、例えばアルツハイマー型認知症では、この神経細胞が変性して脱落してしまうことが原因であることが分かっている。
同研究所による従来までの研究によって、歩くことでマイネルト神経が活性化され、脳の血流量が増加することを明らかにしていた。

研究チームは歩行と咀嚼(そしゃく)は同じリズム運動であるため、歩くことと同様によく噛むこともマイネルト神経を活性化させるのではないかという仮説を立てた。そこで、麻酔したラットで大脳皮質にある咀嚼運動を引き起こす咀嚼野を電気刺激して、脳の血流量とマイネルト神経の活動との関係を調べた。

咀嚼野を刺激するだけでも脳の血流量は増加する

研究チームが麻酔をかけたラットの咀嚼野に電気刺激を加えると、大脳皮質の前頭葉や頭頂葉で50%近くも血流量が増加することが確認された。さらにマイネルト神経細胞が活動できなくなるような処置を施すと、咀嚼野を電気刺激しても脳血流量の増加反応が小さくなることも示されたという。つまり、噛むことによって脳の血流量が増加するのは、このマイネルト神経が活性化されることによるものであったのだ。

しかし、まだ分かっていないことがある。咀嚼野に電気刺激を加えるとラットには咀嚼運動が強制的に生じるが、血流量が増加するのは咀嚼筋の収縮、つまり「噛む運動」によるものか、咀嚼野への電気刺激によるものかは、この実験手法では区別がつかないのだ。そこで研究チームは、咀嚼筋が収縮しないように薬を投与して、同じように咀嚼野を刺激したところ、咀嚼筋が収縮しないにも関わらず脳血流量は同じように増加したという。

噛むことを”イメージ”するだけで脳が活性化?

この事実は、驚くべき可能性を秘めている。論文の著者によると、脳血流量が増加するこの反応に咀嚼筋の運動は関係ないことから、咀嚼を”イメージ”するだけでも実際に咀嚼するのと同じように、脳血流量が増加しうるという。同研究所では高齢者を対象とした研究を行っているが、この研究は私たちの生活にも役立ちそうだ。消化を助けるだけでなく、認知機能にも良い影響を及ぼすというのだから、これを今日から実践しない手は無いだろう。

よく噛んで、よく学ぼう。

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