ブラックホールを中心とした新しい惑星系を提唱、鹿児島大学と国立天文台

2019年11月26日

ブラックホール周辺の惑星

私たちの太陽系はじめ、惑星は基本的に恒星の周囲を回る天体だ。しかし、鹿児島大学と国立天文台の合同研究チームはこのほど、全く新しい惑星系モデルを提唱した。銀河の中心には一般に、太陽の100万倍~10億倍もの大質量のブラックホールが存在することが知られているが、この銀河中心にある大質量ブラックホールを中心とした、特殊な惑星系が形成されている可能性を示唆したのだ。

太陽系以外で初めて惑星が発見されたのは1995年のことだ。ジュネーブ天文台の天文学者、ミシュエル・マイヨールとディディエ・ケローは、ペガスス座51番星のスペクトルのわずかな変化から惑星の存在を証明したのだ。現在では様々な系外惑星の発見方法が確立され、現在までに3,000以上もの惑星が発見されている。恒星の周囲に惑星が存在することは、今や広く知られていることだ。

しかし、鹿児島大学の和田 桂一教授と塚本 裕介助教授、国立天文台の小久保 英一郎教授らの研究チームは、銀河中心にある大質量ブラックホールの周囲を回るような惑星系のモデルを世界で初めて理論的に提唱した。

そもそも惑星は、新しく誕生した恒星の周りを取り巻く、濃いガスと塵からなる「原始惑星系円盤」のなかで、微惑星が衝突や合体を繰り返して形成される。私たちの太陽系も、かつてはいくつもの様々な微惑星が誕生しては衝突と合体を繰り返し、現在のような8つの惑星に落ち着いたのだ。


Planet-Forming Disk Around a Baby Star flickr photo by NASA Universe shared under a Creative Commons (BY) license
原始惑星系円盤(イメージ図)。

原始惑星系円盤のなかでは、マイクロメートルサイズの岩石や氷が浮遊しており、これらが互いにぶつかると塵が凝結して数センチメートルの塊になる。これらがさらに大きくなると次第に衝突の衝撃や自身の重力によって潰れ、密度が大きくしながら数キロメートルサイズの微惑星へと成長するのだ。やがて、大きな重力で周囲の物質を取り込みながら、微惑星同士が衝突・合体を繰り返して最終的に惑星となるのだ。

研究チームらは、銀河中心の大質量ブラックホールの周囲を取り巻く、太陽の10万個分もの膨大な塵に注目した。これは、惑星が誕生する原始惑星系円盤に含まれる塵の10億倍にものぼると考えられるのだ。和田 教授らは、条件さえ整えばどんな恒星の周りでも惑星の形成は起こりえるため、大質量ブラックホールの周りにある膨大な塵でも惑星形成の条件が満たされるかもしれないという発想に至ったという。

ブラックホールにおける惑星の形成
恒星から十分に離れた場所では、岩石の塵には氷がまとわりついている。ブラックホールにおける惑星の形成過程では、このような「氷がまとわりついた岩石の塵」が、惑星の形成に重要な役割を果たす。
(credit:国立天文台,鹿児島大学 国立天文台ウェブサイト利用規程)

理論上は、もし大質量ブラックホールの周囲で原始惑星系円盤と同様のプロセスが起きているとすれば、ブラックホールから10光年ほど離れた場所に地球の10倍もの惑星が1万個以上も形成されることが計算から導かれたという。しかし、現状の技術では、ブラックホール周辺に存在するとされる惑星を観測するための有効な手段は存在しないため、理論の実証は困難を極めるという。

系外惑星の一般的な発見方法は、例えば惑星の影響によって恒星の重心の変動を捉える方法(ドップラー分光法)や、惑星が恒星を通過するときの明るさのわずかな変動をとらえる方法(トランジット法)などが存在するが、観測対象が恒星ではなくブラックホールとなると、これらの手法は全く意味を為さなくなる。果たして、理論を実証することはできるのだろうか?

この論文はアメリカの天体物理学専門誌『The Astrophysical Journal』に11月26日付で掲載されている。


エピネシス・コラムズ
・論文では、ブラックホール周辺に存在する惑星は一般的な”惑星”とは異なる新しい種類の天体であるため、厳密には”惑星”ではないと注釈されています。

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