”異常のない病気”慢性疲労症候群を診断するバイオマーカーを発見、理化学研究所らの研究グループ

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Alison flickr photo by indii.org / Lawrence Murray shared under a Creative Commons (BY) license

理化学研究所、三重大学、大阪市立大学、関西福祉科学大学、日本医療研究開発機構からなる合同研究グループは、これまで診断が難しかった慢性疲労症候群の診断に利用可能とされるバイオマーカーを発見した。この成果は2019年11月26日に『Brain, Behavior, and Immunity』にオンライン掲載されている。

慢性疲労症候群はある日を境に原因不明の疲労が持続する病気で、患者は社会生活が次第に困難になっていく。20~50歳の人に見られ、特に女性に多く見られる。強い疲労感の他にも脱力感や思考力の低下、微熱やリンパの腫れ、筋肉痛などが現れることもあるが、最大の特徴は”しっかりとした異常が見つからないこと”だ。

”異常のない”病気”

患者に異常な状態が続いているのは明らかであるが、この慢性疲労症候群では、あらゆる検査を行っても、身体のどこにも異常が見当たらないのだ。微熱やリンパの腫れ、筋肉痛などの身体的症状は一般的な体調不良でもよくみられる症状であり、医療機関を受診したとしても医師に気付かれにくく、別の病気として診断されることもある。

立つことすら難しく、寝たきりになるほどの脱力感にも襲われているにも関わらず、何も異常が見当たらないことから、周囲からは「仮病」や「なまけ病」と誤解され、必要なケアが受けられない場合も少なくないという。慢性疲労症候群は、まだ診断されていない人も含めて日本では最大推計38万人もいると考えられているという――

新しい慢性疲労症候群の診断基準

世界中で徐々に認知されるようになり、現在では診断される患者も多くなった慢性疲労症候群であるが、これまで”異常のない”この病気を確定的に診断することは難しいかった。

従来までは「生活が著しく損なわれるような強い疲労感が少なくとも6か月以上、持続または再発を繰り返すこと」、そして「他の病気の可能性が除外されていること」が診断基準であったが、今回、理化学研究所をはじめとする研究グループが発見した新しいバイオマーカーによって、より正確に慢性疲労症候群であることを診断することが可能となった。

研究グループらは、慢性疲労症候群の患者の血しょう(血液の液体成分)を採取し、フローサイトメトリーやプロテオミクス解析などを使って健常者と数値を比較した。その結果、細胞から放出されるナノ粒子”細胞外小胞”の数値が高いことが確認されたのだ。

この数値は一時的な疲労患者や、うつ病患者と比較しても高く、慢性疲労症候群に特有のバイオマーカーであることが明らかになっており、他の似たような病気との判別も可能であると考えられている。

この発見は、単純に診断が容易になっただけではない。細胞外小胞が多いというこの特徴は、まだ明らかになっていない発症機序を解明したり、有効な治療法を確立させるきっかけになるかもしれない。”異常のない病気”の異常が、ついに明らかになりつつあるのだ。