有給の出産休業は母子の健康にも影響を及ぼす

2020年3月31日

働いている女性の約半数は出産を機に退職しており、もし就業を継続しても産休中は無給である会社は多い。ただでさえ出産を控え、今後の育児にも多くのお金が必要であるのに、経済的に追い詰められてしまうこの現状は社会における大きな問題だ。

2020年、アメリカの精神医学雑誌『Harvard Review of Psychiatry』で発表された論文によると、産休が有給であるかどうかは経済的な問題だけにとどまらず、母子の健康にも少なからず影響を与えているという。
今回、アメリカ・カリフォルニア大学サンフラシンシスコ校の研究チームは、有給の産休が母子に影響を与えた国内外の研究についてレビューを行った。

母子の健康への影響

アメリカで1,907人の母親を対象に行われた2005年の研究によると、有給の産休を12週間以上取得できた母親は、スケジュール通りに予防接種を受けさせている割合が高く、問題行動が少なく、母乳育児の割合およびその期間が長かったという。

日本でも、例えば麻疹のワクチン接種率は約95%、約20人に1人がワクチン接種を行っていない。その理由には意外にも「多忙」「うっかりしていた」というものや、なかには「自然なものではない」「信用できない」といった親の信念や懸念によるものが多い。
産休において有給をより長く取得できたことで、育児生活にゆとりができ、ワクチンや母乳栄養における正しい知識を学ぶ時間や機会が増えたのではないかと考えられる。

参考記事 – 日本で麻疹が急増、ワクチンの普及した現代でなぜ感染するのか?

また、3,350人を対象とした2012年のアメリカの研究では、有給の産休期間が長いほど、良好な母子関係が築かれ、子どもの成績も高かったという。もちろん、出産前後に有給を取得できるような”裕福で恵まれた家庭環境”による影響は無視できないが、少なくとも子どもと接触あるいは学習する機会が増え、子どもの脳の発達や人格の形成に良い影響を与えたのだろう。

有給でない場合の「悪影響」も

1,507人の母親を対象にした2011年のオーストラリアの研究では、有給の産休を取得できた女性は、パートナーの男性から精神的あるいは身体的虐待を受けた割合が58%低下していたという。また、3,350人の母親を対象にした2012年のアメリカの研究によると、有給の産休が8週間未満の場合、健康状態の悪化や抑うつ症状の増加などがみられたという。

このように有給の産休による”経済的な余裕”が、”時間的あるいは精神的な余裕”にも影響を与え、子どもやパートナーとの良好な関係の構築や健全な精神的活動に繋がっているのだ。
産休時に有給を取得できない場合でも、労働基準法により定められた「出産手当金」を受け取ることができるが、日本の制度はまだまだ十分とは言えない。安心して出産・子育てができる社会が1日でも早く実現されることを願う。

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