銀の抗菌作用で細菌感染を防ぐ、銀コーティングの人工股関節が科学技術分野賞を受賞

AG-PROTEX
銀コーティングの加工技術「AG-PROTEX」が使用された人工股関節。
京セラ・AG-PROTEXのページより

佐賀大学と京セラメディカル株式会社の研究者らが開発した銀コーティング加工技術「AG-PROTEX(エージー・プロテクス)」を応用した人工股関節が、2020年度文部科学大臣表彰の科学技術分野賞を受賞した。

人工関節は日本だけでも年間13万例以上が行われているが、そこで問題となるのが骨・関節の手術部位感染 (Surgical Site Infection : SSI) だ。

この手術部位感染は人工関節に置き換える手術によって起きる患部の細菌感染症であり、治療が困難であることも多く、何度も再発を繰り返して、ときには人工関節を入れた患肢を切断しなくてはならないこともある。そこで佐賀大学の研究者らは、2005年から人工関節に抗菌性能を付与する研究に着手してきた。

銀は細菌にとって”猛毒”

そこで注目されたのが「銀」だ。銀は古くから抗菌作用を持つことで知られており、古代エジプトや中国ではミイラの防腐剤として硫化銀が用いられ、中世のヨーロッパでは銀食器が利用されてきた。銀は多くの細菌にとって猛毒であるが、その一方で生体毒性は低い。

研究者らはハイドロキシアパタイトに酸化銀を含有させ、2,700℃という高熱で人工関節インプラントの表面に吹き付けるという銀HA溶射被膜の加工技術「AG-PROTEX」を開発した。これにより、人工関節表面ではハイドロキシアパタイトの骨伝導能を持たせつつも、銀による抗菌性能を発揮させることに成功したのだ。

この技術により作られた人工関節は2016年から発売され、去年2019年までに国内の医療機関175施設で6,000例を超える手術に使用されている。佐賀大学の臨床研究成果によると、2016年~2019年の抗菌性人工股関節による術後の手術部位感染率は0.2%で、2005年~2014年における手術部位感染率0.6%と比べてリスクの低減に成功した。

人工関節などの整形外科インプラント市場は約8割が海外からの輸入であり、研究者らは「さらに抗菌性能を高めるだけでなく、今後は海外マーケットでの競争力も獲得したい」とコメントしている。