ストレスによってがん細胞が増殖・転移するメカニズムを解明


Small Cell Carcinoma, Pleural FNA flickr photo by euthman shared under a Creative Commons (BY) license

慢性的なストレスが、がんの進行に影響を与えていることは知られていたが、岡山大学と国立がん研究センターによって、そのメカニズムの一部が解明された。どうやら、ストレスに関連している神経が、がん組織に入り込んで症状の進行に直接影響を与えているようだ。

私たちの身体には、交感神経と副交感神経という自律神経が全身に張り巡らされており、身体の様々な機能を調節している。副交感神経は休息状態のときに活性化する神経で、交感神経は緊張状態のときに活性化する神経だ。
仕事や人間関係などで慢性的なストレスを抱えている人は、特にこの交感神経のはたらきが活発になっている。

研究グループが、国立がん研究センターで治療を受けている乳がん患者のがん組織を調べたところ、この乳がん組織内に交感神経が入り組んでいる様子が観察された。さらに、このがん組織内に入り込んだ交感神経の密度が高い人ほど予後が悪く、がんが再発しやすいことが明らかになったという。

交感神経が直接、がん組織に影響を与えていると考えた研究グループは、ヒトの乳がん細胞を特殊なマウスに移植し、乳がん組織に入り込んだ交感神経を刺激した。その結果、刺激を行わなかったマウスと比べて、刺激を与えたマウスではがんの進行が非常に早くなり、がん組織の大きさは2か月後には約2倍、転移したがん組織も大きくなっていたという。
つまり、慢性的なストレスによって交感神経のはたらきが活発になり、この交感神経の刺激を受けたがん組織は増殖・転移を引き起こしやすくなるのだ。

一方で、乳がん細胞内の交感神経を除去したマウスでは、なんと2か月が経過してもがん細胞の大きさはほとんど変わらず、がんの転移も見られなかったという。もしかしたら、この研究成果は全く新しいがん治療を開発するためのヒントになるかもしれない。

がん患者でなくとも、交感神経が常に活発にはたらいているような、ストレスレベルの高い生活が身体に良いはずがない。睡眠時間をしっかりと確保して、無理し過ぎないよう気を付け、リラックスできるような時間を作ることで、少しでも日常のストレスを軽減するように心掛けよう。

エピネシス・コラムズ
・実験に使用されたマウスはいわゆる超免疫不全マウスと呼ばれるもので、通常のマウスにヒトのがん細胞を移植しても本来は定着しません。