1歳7か月の娘に完全菜食を徹底、極度の栄養失調状態に

2019年9月1日


Salad flickr photo by WILLPOWER STUDIOS shared under a Creative Commons (BY-SA) license

オーストラリアで30代の両親が、当時1歳7か月の娘に完全菜食の食べ物を与え続け、重度の栄養不良状態にさせた事件について、シドニーのダウニング・センター裁判所は今年、この両親に対して18か月の集中的処遇命令、および300時間の社会奉仕活動を言い渡した。

宗教上あるいは個人の倫理観などの理由から、肉などを避けて野菜中心の食生活を送る人々は菜食主義者(ベジタリアン)と呼ばれているが、さらにはさまざまな動物性食品を徹底して排除する人々がいる。完全菜食主義者、いわゆるヴィーガン(vegan)だ。

具体的には、ベジタリアンでは許容されるような卵や、牛乳やチーズなどの乳製品、ハチミツなどの動物が生産するあらゆる食品を排斥する。このような完全菜食主義の根本には、動物愛護や環境問題などに対する独自の思想があり、しばしば一部の”過激派”は、畜産業者や肉料理を提供するレストランなどを襲撃するといった社会問題を引き起こしている。

この両親は2人とも完全菜食主義者であり、娘にはオーツ麦や米飯、バナナやじゃがいも、ピーナッツバターサンドなどの完全菜食の食べ物しか与えていなかったという。2018年3月に娘が発作を起こし、母親が救急医療サービスに連絡したことで発覚、発見された女児は1歳7か月であるにも関わらず、まるで”生後3か月”のような見た目であったという。

本来ならば多くの子どもが一人で歩けるようになり、自我をもって様々な言葉で感情表現を行う時期だが、発見された女児は起き上がることができず、言葉も話すことも、寝返りを打つことすらできなかった。

骨格はあまり発達しておらず、なんと歯すら生えていなかったという。体重はふつう8kg以上あるが、女児の体重は発見当時4.9kgほどしかなく、血色は悪くて手足は冷たかった。さらに低血糖や筋緊張低下、ビタミンDの不足によって骨が軟化する「くる病」などの症状も見られたという。

乳児期にどのような栄養を与えていたかは明らかにされていないが、ヴィーガンではしばしば母乳栄養を与えるかどうかで問題になることがある。近年ではヴィーガンに向けて開発された植物性の粉ミルクも登場しているが、本来の栄養方法である母乳とは成分が異なるため、正常な発達を妨げる恐れがある。

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両親は起訴事実を認めており、娘の体調不良を栄養失調によるものと受け入れられずにいたという。2人には裁判所から社会奉仕活動に加えて育児や栄養について学習することが命じられた。保護から1年経った女児は現在、治療を行いながら親戚の家で暮らしている。

完全菜食主義であるヴィーガンの思想は、本来は雑食性の人類にとって”偏食”といえるだろう。実践には正しい知識が必要になる――あらゆる価値観や思想は受け入れられるべきだが、それを他者に押し付けるようなことがあってはならない。たとえそれが我が子であっても、だ。

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エピネシス・コラムズ
・ピーナッツバターの”バター”はペースト状の外観から名付けられたもので、実際にバターが使用されているわけではありません。ピーナツバターの油分はピーナッツに由来するものです。

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