民間の人工衛星が急増、地上での天体観測に影響を及ぼす可能性


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アメリカのワシントン州シアトルに本拠を置く大手IT企業、アマゾン(Amazon)は新たなブロードバンドサービス事業のために3,000基以上の人工衛星を打ち上げるための申請書を2019年7月にアメリカの連邦通信委員会(FCC)に提出していることが明らかになった。この申請書によると、3,236基もの人工衛星を低地球軌道に配置し、北緯56度から南緯56度までの通信領域をカバーするという。

近年でも、アメリカの宇宙開発企業であるスペースエックス(SpaceX)が連邦通信委員会に約4,200基もの人工衛星を打ち上げる許可を得ており、2019年5月23日に最初の60基が打ち上げられたばかりだ。スターリンクと呼ばれているこのプロジェクトでは、最終的に1万2,000基もの人工衛星を打ち上げる予定であるという。

こうした宇宙開発事業が進む一方、天文学者らはこうした動きに懸念を強めている。1957年に世界で初めて打ち上げられたソ連のスプートニク1号にはじまり、これまで打ち上げられた人工衛星の総数は8,000基以上、そのうち軌道上にある衛星は5,000基以上といわれている。あまりに増えすぎた人工衛星は今や地上における、あらゆる天文的観測を妨げているのだ。

これは、5月にスペースXが打ち上げた人工衛星が、アメリカにあるローウェル天文台の観測中に偶然写り込んだものだ。人工衛星が通過した部分が白い線となっていることが分かる。ローウェル天文台がインスタグラムで投稿した。

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このように白い線となって写っているのは太陽光の反射によるものだ。日の出や日没の前後に観測を行うことによって、こうした人工衛星による影響を小さくすることはできるが、それで完全に防げるわけではない。

例えば、人工衛星が発する電波だ。本来、人工衛星が地上と通信を行う電波の周波数は、電波望遠鏡が利用する電波の周波数と重ならないように取り決められているが、周波数が近い電波の影響は少なからず受けてしまうという。
電波天文学では、数十億光年離れた天体の電波を調べる。月に置かれた1台の携帯電話よりもはるかに弱い電波を扱っているのだ。原因不明のノイズの正体が、実は電子レンジだったこともある。今後も大量に打ち上げられる人工衛星によって、このようなノイズが増えることが懸念されているのだ。

人工衛星におけるこうした問題は30年以上前から指摘されているが、未だに議論が続いている。あらゆる電波ノイズの影響を受けない月の裏側で観測を行うという構想もあるが、それこそ”ムーンショット”の域を出ない。各国で宇宙開発競争が行われているが、同時に慎重さも求められているのだ。

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