魚類も相手の顔に注目することが初めて明らかになる


2009-01-25 München 004 flickr photo by Allie_Caulfield shared under a Creative Commons (BY) license

私たちが人を判断するうえで、「顔」は非常に重要な部分だ。表情、目線の動き、顔つきなどから相手の性格や心理状態、さらには年齢や性別などの個体情報を読み取る。このような、相手の顔に注目する行動はヒトだけでなく高い社会性を持つ動物でも確認されている。

2019年6月10日にイギリスの科学専門誌『Scientific Reports』で発表された大阪市立大学の研究によると、ヒトやチンパンジーだけでなく、どうやら社会性の高い魚類においてもはじめに相手の顔に注目し、さらにその後も相手の顔を頻繁に見るという。

大阪市立大学の従来の研究によって、社会性の高いアフリカの淡水魚であるプルチャー(Neolamprologus pulcher)という魚が、顔にある模様に基づいて親しい個体であるか未知の個体であるかを識別していることは明らかになっていた。ヒトでは0.45秒かかる個体の識別が、プルチャーではわずかに早い0.4秒で識別できるという。しかし、プルチャーが本当に顔に注目しているかどうかはこれまで実証できていなかった。例えば、ヒトやチンパンジーの場合はアイトラッカーという視線を計測する装置などを使って、どこに注目しているかを目の動きから調べることができるが、プルチャーなどの魚にこの技術を使うことは極めて困難であったからだ。

魚も両目で相手をじっくりと見る

研究グループは魚が「どこを見ているのか」について調べる方法を模索するなかで、プルチャーが「対象物に対して観察が必要なときには、近づいて正面からじっくりと見る」という習性に注目した。魚類の目は側面についているが、その視野は非常に広いため、正面には私たちと同じように両眼視できるような領域が存在するのだ。
実際に、研究チームが水槽の壁にレーザーポインターで光点を作ると、プルチャーは光点に対して正面から近づいて観察を行ったという――つまり、プルチャーが”観察行動”に入ったときの直線上に、注目すべき対象物があるということになる。

研究グループはプルチャーに同種や他種の写真を見せて、このときのプルチャーの反応を録画し、映像の解析を行った。その結果、プルチャーは相手を見るとき、同種か異種か、そして顔が右にあるか左にあるかに関わらず最初に相手の顔を観察することが明らかになったのだ。さらに、プルチャーはその後も相手の顔を頻繁に観察することが確かめられたという。

魚が顔に注目すると考えられる例は、これまでにいくつか知られていた。例えば、カニハゼというハゼには背ビレに大きな2つの目玉模様があり、本当の顔がどこにあるのかわかりにくくなっているのだ。(参考記事:動物たちの不思議な目玉模様「眼状紋」とは?)

また、ヒトやチンパンジーでは顔神経という相手の顔を素早く認識するための特殊な脳の神経回路が知られており、今回の研究はヒトよりも素早く個体を識別できる魚類においても顔神経が存在する可能性を示唆している。いずれは脳神経学的な見地から“顔の重要性”が明らかになるかもしれない。