多くの類人猿は相手の立場にたって考えることができる

2019年7月7日


Brief Look At Baby flickr photo by Oddernod shared under a Creative Commons (BY-SA) license

私たちの普段の生活では、他人の考えている事を理解することは当たり前だが、小さな子どもにとっては非常に難しい。例えば、「ある男の子がおもちゃ箱にボールを入れて部屋を出た後、女の子がおもちゃ箱に入ってたボールをリュックの中へ移しました。部屋から戻ってきた男の子は、ボールを取り出そうとしてどこを探すでしょうか?」という問題を、3歳の子どもに質問すると、答えはおもちゃ箱であるが、ほとんどの子どもは「リュック」と答えてしまう。

これは、心理学における誤信念課題と呼ばれるもので、相手の立場にたって考え、「相手が何を知っていて何を知らないのか」を把握する心の理論がしっかりと発達しているかどうかを確かめる実験だ。ヒトでは、4~5歳になるとほとんどの子どもが「おもちゃ箱」と正しく答えることができるようになるという。

では、オランウータンやチンパンジーなどのヒト以外の霊長類ではどうなるのだろうか?2017年にドイツのマックス・プランク進化人類学研究所は、この誤信念課題と同様の実験を行った。ただし、彼らに直接質問することはできないので、方法を変える必要がある。研究チームらは、ある映像をオランウータンやチンパンジー、ボノボなどの類人猿に見せることにした。

映像では同じ部屋にいる人間Aと人間Bが登場し、人間Aが見ている前で人間Bが2つある箱のうち左の箱に石を隠す。人間Aがそれを見て部屋を出た後、人間Bは石を左の箱から右の箱へ入れ替えてから部屋を出る。部屋に戻ってきた人間Aは、どちらの箱を開けるのか――

アイトラッカーという視線の動きを計測する装置で、人間が箱を開けようとする前に類人猿たちがどこに注目をしているのかを計測したところ、類人猿たちは人間Aが「石が入っている」と思い込んでいる左の箱を有意に注視したという。人間の立場にたって考え、どの箱を開けようとしているのかを彼らは予測したのだ。
従来までの研究では、類人猿が誤信念課題をクリアできたという報告はなく、ヒト以外で「相手の心を読む能力」がこの実験によって初めて確認されたという。

論文では、類人猿たちが社会的交流を行うなかで、この能力が相手の考えを理解することに役立っていると結論付けており、さらに今後の研究によって私たちが予想しなかったヒトとの共通性が明らかになるかもしれない。

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