毒蛇は進化のなかで毒成分の配合を常に変化させ続けている

2019年7月5日


IMG_33963R flickr photo by .RGB. shared under a Creative Commons (BY) license

“まるでバーテンダーが、客に合わせてオリジナルブレンドの「カクテル」を作るように、毒蛇もこれと同じことをする――ただし、相手を喜ばせるためのものではなく、死に至らしめるためのものだ“

2019年5月に世界保健機関(WHO)は、毒蛇による死亡者数は全世界で年間8.1万~13.8万人にのぼると発表した。さらに、命は助かっても四肢の切断や腎不全など何らかの後遺症に苦しんでいる人の数は40万人にものぼるという。WHOは貧困地域における抗毒血清の不足が被害拡大の原因であるとしているが、最も根本にある原因はなによりも蛇の毒そのものにある。

蛇の毒はタンパク質毒素の混合物、いわば“毒のカクテル”だ。動物の神経に作用して呼吸中枢を麻痺させる神経毒、血液を凝固させる成分を大量に消費させて出血傾向を引き起こす出血毒、筋肉の融解・壊死などを引き起こす筋肉毒など、その作用は多岐に渡り、例え同じ種の蛇であっても生息域によってタンパク質毒素の割合が異なるという。

『Molecular Biology and Evolution』誌のオンライン版に掲載された沖縄科学技術大学院大学(OIST)生態・進化学の研究によると、毒蛇は致死率が最も高くなるように毒液の配合を改良し続けているという。

研究チームはヘビ毒の成分に関する研究論文のデータを統合し、数学モデルを用いてヘビ毒の生成に関わる遺伝子同士がどのように相互作用してきたのか解析した。

その結果、タンパク質毒素の生成に関わる遺伝子は自由に独立して進化し、毒蛇は進化のなかで“カクテルのレシピ”を絶えず改善し続けていることが明らかとなった。この能力によって、獲物または天敵が毒への抗体を獲得しても新たな毒を作り出して対処することができ、進化的な軍拡競争において優位を保てるのだ。

これらの研究成果は、蛇が作り出す毒液の特性についての理解を深め、今後毒液の配合がどのように変化するかを予測して特効性の高い治療を行うことに役立つという。カクテルを作る材料と、予想される組み合わせさえ分かれば、毒蛇が作り出す独創的な”オリジナルのレシピ”に私たちが驚かされることは無さそうだ。

関連記事
肋骨を曲げて、まるで空中を滑るように移動する「トビヘビ」とは?
スパイダーマンのような配色のトカゲ「ムワンザ・アガマトカゲ」
食べた相手の武器を再利用する、アオミノウミウシの「盗刺胞」とは?
産卵時にウミガメが涙を流す理由とは?

生命科学カテゴリの最新記事