太陽の数十~数千年分のエネルギーを数ミリ秒で放出する「高速電波バースト」とは?

2019年7月3日

宇宙では、私たちの想像を絶するような規模の物理現象がいくつか知られている。なかには、その理由が全く分かっていないものもある――例えば、宇宙のある特定の方向から1000分の1秒ほどのわずかな時間で、太陽が数十年~数千年かけて放出するエネルギー量に相当するような、膨大な電波が放射される現象「高速電波バースト(Fast Radio Burst:FRB)」がその1つだ。

2007年に初めて確認されたこの現象は、宇宙の全方位から観測され、1日に1,000回ほど発生していると考えられているが、ほんのわずかな一瞬であるために検出できたものはこれまでに100件にも満たない。発生原因については「マグネター」と呼ばれる超強磁場中性子によるものとする説が有力であるが、他にもいくつもの発生モデルが提唱されており、現在でも活発な議論が続いている。

”反復する”高速電波バーストの存在

2012年に、パルサーと呼ばれる天体を調べていた研究者らが偶然にも高速電波バーストを観測した。研究者らは観測直後に、同じ領域で再び観測できないかどうか期待したが、残念ながら何も観測することはできなかった。
しかし、3年後となる2015年に同研究者らが再び同じ領域を観測してみたところ、なんとたった3時間で10回もの高速電波バーストの観測に成功したのだ。どうやら、高速電波バーストには、”単発で終わるもの”と”反復して起きるもの”があるようだ。
2017年には、この反復して起きる高速電波バーストの位置を特定することに成功。場所は地球から約30億光年離れた、若い恒星が活発に形成されている矮小銀河の中心付近であることが明らかとなった。

単発の高速電波バーストはどのようにして起きる?

反復する高速電波バーストの位置は特定に成功したが、問題となるのは単発の高速電波バーストだ。1度しか起きないために、位置の特定は非常に困難を極めた。この問題に対処したのが、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の研究チームだ。単発の高速電波バーストを見逃さないために毎秒10億個もの観測データを取得して解析した結果、ある単発の高速電波バーストの発生源を特定することに成功した。この研究成果は、2019年6月27日の科学誌『Science』に掲載されている。

今回特定された単発の高速電波バーストは、反復する高速電波バーストの発生源となっていた銀河とは対照的に、古い恒星が多く存在する巨大銀河の外縁部から発せられていることが明らかとなっており、過去に行われてきた理論とは適合しなかった。これは、単発の高速電波バーストと反復する高速電波バーストでは発生機構が異なることを示唆している。もしかしたら、単発の高速電波バーストでも複数の発生機構が存在しているのもしれない――

謎は深まるばかりだが、これまでの数年間で多くのことを明らかにしてきた。私たちの想像を絶する、この凄まじい物理現象は一体どのようにして起きるのだろうか?その答えに、私たちは確実に迫りつつある。

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