”苦味を抑える”苦味物質を発見、キツネザルの研究から

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一般に苦味とは不快なものだ。そもそもは毒物を避けるための反応であるため、不快であるのは仕方のないことかもしれないが、小さい子供が薬を服用するときなどには問題となることもある。苦味を抑えるためにこれまで様々な工夫が行われてきたが、将来的には苦味の刺激そのものを感じにくくすることができるかもしれない。

京都大学霊長類研究所の今井 啓雄教授らの研究チームは、マダガスカル島に生息するキツネザルの仲間で味覚受容体を解析していたところ、偶然にも”苦味を抑える苦味物質”を発見した。
研究チームらは、クロキツネザルに天然の苦味物質であるサリシンを与えると通常の苦味反応を起こすが、サリシンと一緒にアルブチンという天然の苦味物質も一緒に与えたところ、苦味反応が抑えられることを発見した。

”苦味を抑える”苦味物質

アルブチンは苦味物質であるが、クロキツネザルでは苦味を感じないどころか、他の苦味物質の苦味までも抑えてしまうのだ。これは、単にアルブチンが苦味を分かりにくくさせているわけではない。アルブチンが苦味刺激そのものを打ち消すよう強い抑制刺激を生み出しているのだ。

このような、苦味刺激とは逆の作用をもたらす「逆作動薬(インバースアゴニスト)」は、これまでに人工変異体に人工の苦味物質を反応させるなどといった特殊な例でしか確認されていなかった。今回の実験は、苦味を抑える効果を持つような成分を発見、あるいは開発するためのヒントになるかもしれない。

また、実験ではクロキツネザルとエリマキキツネザルではアルブチンによって苦味の抑制反応がみられたが、ワオキツネザルだけは苦味の抑制作用は確認されなかったという。どうやら進化の途中でワオキツネザルだけが、アルブチンが効かないような突然変異を起こしていたようだ。
なぜワオキツネザルだけアルブチンが効かなくなったのか――研究者チームらは今後、キツネザルの食べ物にアルブチンや他の類似の物質がないか調べ、採食生態学的な観点から研究を続けていくという。