抗うつ薬は量を「増やす」よりも薬の「種類を変える」べきという指摘

2019年6月28日


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京都大学の古川 壽亮(としあき)教授と、オックスフォード大学のAndrera Cipriani 准教授の研究チームらは、21種類の抗うつ剤の効果や副作用を直接比較した522の臨床試験結果を集めて比較・評価を行い、さらに副作用が少ないとされる新しい抗うつ薬に関する77の論文を検証した。

日本におけるうつ病の生涯罹患率3~7%、世界では3~16%とされており、多くの人々が治療を行っている疾患だ。世界的に増加傾向にあり、今後もこの傾向は続くとみられている。

うつ病を治療する抗うつ薬は従来までに数多く開発・実用化されてきたが、数十種に渡る抗うつ薬の効果を直接比較した試験はこれまでに行われておらず、これまでは医師の個人的な経験印象による影響が大きかった。研究チームらは522件、延べ116,477人の臨床試験結果を収集し、統計的に処理をすることで21種の抗うつ薬を網羅的に比較・評価して、特に有用な抗うつ剤を特定した。

抗うつ薬は量を増やさずに薬を切り替えた方が有効

研究チームらはさらに、副作用が少ないとされる新しい抗うつ薬に関する77の論文を検証し、薬の量における効果の違い副作用の影響などを調べた。その結果、いずれの抗うつ剤でも低い用量で高い効果を示したが、抗うつ剤は量を増やしても効果はほとんど変わらない一方で、副作用によって服用を中断する人の割合は増えていたという。

現在、日本うつ病学会が提唱しているうつ病治療の原則では「急性期における薬物療法では低用量から開始し、有害作用に注意しながら可能な限り速やかに増量する」とされており、従来までは効果があまり見られない場合には量を速やかに増やすべきだと考えられてきたが、今回の研究によって量を増やしても逆効果であることが指摘された。今後は抗うつ薬治療で効果が無かった場合には増量するよりも他の抗うつ剤に切り替えるような治療方針へと転換する必要があるかもしれない。

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