つる植物のヤブガラシは、巻き付く先にいる害虫を感知できる

2019年7月1日


Bushkiller (Cayratia japonica) flickr photo by harum.koh shared under a Creative Commons (BY-SA) license

つる植物は、 他の植物や物体を支えにして茎を伸ばす植物だ。自重を支える必要がなく、競合する植物を覆いながらより高い場所へと茎を伸ばすことができるため、他種の植物よりも効率的に日光を浴びることができる。だが、もしもつるを伸ばした植物に害虫が発生していた場合、つるを伝って害虫が侵入し、自らも被害を受けかねない。しかし、どうやら一部のつる植物は巻き付く先の植物にハダニなどの害虫がいるかどうかを察知して回避することができるようだ。


ヤブガラシ flickr photo by chidorian shared under a Creative Commons (BY-SA) license
ヤブガラシ(ビンボウカズラ)はブドウ科の多年草だ。つるを伸ばして急速に成長し、民家の堀やフェンス、樹木などを覆い尽くす。地下茎は横に長く伸びるため、一度繁殖すると完全に除去するのは難しい。

つる植物であるヤブガラシは、日本では広くみられる雑草の1つで、強い繁殖力を持つことで知られている。興味深いことに、ヤブガラシは巻き付いた植物が同種であるヤブガラシなのか他種の植物かを識別することができ、同種のヤブガラシであった場合は巻き付かないように回避するという。この優れた識別能力に注目した京都大学の矢野 修一助教らは、ヤブガラシが同種または他種を識別できるだけでなく、ハダニなどの害虫がいるかどうかも識別できることを発見した。

矢野助教らは、同じつる植物であるヤブガラシアサガオを用意して、ハダニがいるマメ株ハダニのいないマメ株にそれぞれ巻き付く割合を調べた。
アサガオはハダニがいる株といない株の両方に巻き付き、ハダニがいる株に巻き付いたアサガオはひどく加害された一方で、ヤブガラシだけはハダニがいるマメ株に触れたとたんに先端が激しく縮れて巻き付かなかったという。

ヤブガラシの驚くべき識別能力

ヤブガラシはなぜ、ハダニがいるかどうか識別できたのだろうか?さらなる実験で、驚くべき理由が明らかとなった。実験に使用されたナミハダニをはじめ、多くのハダニは植物に粘着性の糸を張り巡らせて自らを守る。ヤブガラシは、この粘着性の糸を感知して接触を回避していたのだ。

実際に、粘着性の糸を割りばしに巻き付けてヤブガラシに接触させる実験では、ヤブガラシは割りばしについた糸に触れたとたんに激しく縮れて回避したという。興味深いことにハダニではなくクモの糸で試したところ、ヤブガラシは回避せずに巻き付いたのだ。ヤブガラシにとってクモは、ハダニを食べてくれる益虫だ。ヤブガラシは糸の存在だけでなく、それが害虫か益虫であるかを識別することができるのだ。

”匂い”でいち早く察知する

さらにヤブガラシは、ハダニに加害されたマメ株の匂いだけでも接触を回避することが確認された。加害されたマメ株の匂いを出すストローにヤブガラシに接触させる実験では、ヤブガラシは激しく縮れて接触を回避した。
ハダニの出す糸を感知できるだけでは、接触した場所には糸が無かったとしても、つるを伸ばした先にいるハダニに被害を受ける可能性がある。ヤブガラシは”糸の存在”、そして”匂い”という二重のセキュリティ・チェックによってハダニの侵入を防いでいるのだ。

ヤブガラシで確認されたこれら能力が、他のつる植物にもみられるかどうかは明らかになっていないが、おそらくは多くのつる植物が、様々な手段を使って危険な接触を回避していると考えられている。

このようなつる植物の”賢さ”は、農家や園芸家などの人々にとっては悩みの種だ。ヤブガラシなどをはじめとする、つる性の雑草は強い繁殖力で広範囲を覆い尽くすため、頻繁に駆除する必要があるからだ。しかし、今回の研究を応用すれば、アサガオなどの栽培種は巻き付くが、ヤブガラシなどの雑草は巻き付かないといったフェンス素材を開発できるかもしれない。

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