ブラックホール・シャドウの撮影に成功、一方で広まる誤解

2019年4月13日

2019年4月10日、イベント・ホライズン・テレスコープの共同研究チームは、ブラックホール・シャドウの撮影に成功し、ブラックホールの存在を初めて直接的に証明したことを、世界6か所で同時に行われた記者会見で発表した。


Black Hole Image Makes History flickr photo by NASA Goddard Photo and Video shared under a Creative Commons (BY) license

公開されたこの画像の中央に写っているのがブラックホール・シャドウ、つまりブラックホールの影だ。ブラックホールは光さえも”吸い込む”ため、通常は見ることができないが、ブラックホールの表面近くでは、強力な重力によって周囲にある高温プラズマから発せられた光がねじ曲げられるために、ブラックホールの輪郭が浮かび上がるのだ。これが、”ブラックホール”ではなく、”ブラックホール・シャドウ(ブラックホールの影)”と呼ばれる理由である。

”ブラックホール”なのにオレンジ?

しかしながら、この画像に関して一部では誤解も広まっている。大変に美しい画像であることは間違いないのだが、仮にブラックホールの近くまで”見に行った”としても、この画像のように美しいオレンジ色の光は見えない。

このブラックホール・シャドウの撮影(観測)には、電波望遠鏡が使用されている。つまり、目に見える光(可視光線)で観測されたものではないのだ。実際には、ミリ波と呼ばれる電波の観測データを世界各地の電波望遠鏡から集め、これを電波の強弱や波長によって彩色処理しているに過ぎないのだ。

解析と処理には2年かかった

ブラックホール・シャドウの撮影に成功した、というのはここ数週間の出来事ではない。実は、観測(撮影)そのものは2年前となる2017年4月の時点で既に終了しているのだ。

このプロジェクトでは、世界各地の電波望遠鏡から集められた5ペタバイトにも及ぶ膨大なデータ量を解析し、アルゴリズムを改良してより高精度な画像に処理する必要があった。数か月で終わるとされていた解析と処理であったが、発表までには2年もの歳月を要した。

今回の発表には、まだ”続き”がありそうだ。公表された画像は、おとめ座銀河団にあるM87のブラックホールを観測したものであるが、実はもう一つ、共同研究チームは私たちの銀河系の中心にある、超大質量のブラックホール「いて座A*(エースター)」についても観測していたのだ。

おとめ座銀河団のM87にあるブラックホール
地球からの距離:5,500万光年
質量:太陽の約65億倍

銀河系の中心にあるいて座A*のブラックホール
地球からの距離:2万5,640光年
質量:太陽の約400万倍

いて座A*のブラックホールは、今回発表されたM87にあるブラックホールよりも観測が技術的に困難であるらしく、発表はまだまだ先になりそうだ。私たちの銀河系にあるブラックホールでは、一体どのような姿が写し出されるのだろうか?

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