「カエルの合唱」から、より効率的な通信システムを開発する


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なぜカエルは合唱するのか?

田んぼなどでカエルが集団で一斉に鳴く「カエルの合唱」は、繁殖のためにオスが大きな鳴き声でメスを呼び寄せると同時に、それぞれのオスが自身の縄張りを主張するためのもので、それぞれのカエルは鳴き声をずらして、周囲のカエルと鳴き声が重ならないように”輪唱”する。筑波大学と大阪大学の研究チームは、このカエルの合唱を無線センサネットワークの自律分散型制御へ応用できることを発見し、イギリスの科学誌「Royal Society Open Science」で発表した。

最初に研究チームは、3匹のオスのニホンアマガエルを1匹ずつケージに入れて、50cm間隔で並べて録音した鳴き声の音声データを解析した。その結果、カエルはそれぞれ鳴き声をずらして1分ほど鳴き、3匹が同時に3分間ほど休むというサイクルを繰り返していたという。

カエルが鳴き声をずらすのは、縄張りを周囲のオスに伝えるためのものと考えられている。鳴き声が重なってしまうと、互いの鳴き声がうまく聞き取れないため、コミュニケーションが成り立たなくなってしまうのだ。

カエルが鳴き声をずらすという性質は以前から知られていたが、「長い期間では一斉に鳴き声を出し、そしてある期間では一斉に休止する」という性質は、なんと今回の研究で初めて見出されたという。

カエルが鳴くためにはエネルギーを大きく消耗するが、個々のカエルがそれぞれのタイミングで鳴いたり休んだりを行うと集団全体としての音量は小さくなる。鳴くときは一斉に鳴き、休む時は一斉に休んだ方が効率よくメスを呼び寄せることができるのだ。

ここで重要なのは、合唱をやめさせる指示を出す”指揮者”がいなくても、カエルは周囲と協調して集団全体で合唱をやめることができる、ということだ。

カエルの合唱を無線センサネットワークに応用する

研究チームはこのカエルの合唱と、無線センサネットワークの自律分散型制御という一見異なるシステムの共通点に注目した。

例えばネットワーク上で複数の端末が同時にデータを送信すると、データの受け渡しに失敗してしまうパケット衝突、またはコリジョンと呼ばれる現象が発生してしまうことがある。

しかし、カエルの合唱モデルに従って通信のタイミングを制御すると、それぞれの端末が周囲の端末と重ならないように通信できるため、前述のようなデータの受け渡しの失敗を防ぐことができるのだ。

また、”指揮者”がいなくてもカエルが一斉に合唱をやめることができるように、それぞれの端末が独自に判断して全体的に通信または休止を切り替えられることがシミュレーションにより明らかとなった。

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このように、カエルの合唱モデルを応用することによってネットワークの通信性能を向上させ、さらには無駄な消費電力を低減させることに繋がるという。

実験の数理モデルはニホンアマガエルを元にしているが、世界には約6,500種ものカエルが存在している。研究チームは今後、様々な種類のカエルを調べて、さらにエネルギー効率が優れたカエルの数理モデルを抽出・解析していくという。