日本で「ヒトの臓器を持った動物」を作る研究が認可される

2019年3月10日


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文部科学省は3月1日に「特定胚の取扱いに関する指針」及び「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律施行規則」を改正したことを発表した。これにより、これまでは「ヒトの臓器を持った動物」の元となる動物性集合胚を作る研究しかできなかったが、これからはこの動物性集合胚を動物の胎内に戻して育成・出産させ、「ヒトの臓器を持った動物」を作り出すことが可能となった。

日本臓器移植ネットワークによると、2019年3月時点で臓器移植希望登録者数は、肺では約350件、心臓では約730件、腎臓では12,100件にもなるが、提供される臓器の数は圧倒的に少ないのが現状だ。日本を離れ、海外で臓器移植を行わなければならない患者や、待機中に亡くなってしまう患者も少なくない。これは日本だけの問題ではなく、世界各国で大きな問題となっている。

そこで考え出されたのが、「ヒトの臓器を持った動物」の作製だ。人間の臓器を持った動物の赤ちゃんを作り、育てることで短期間のうちに必要な臓器を作り出し、移植させることができる。

どの動物が利用されるのか?

この研究において主に用いられる動物はブタだ。ブタは短期間で繁殖するうえに、私たち人間と同じくらいの大きさの臓器を持っていて、かつ生理的な機能もよく似ている。

拒絶反応やウイルス感染などを抑える遺伝子をゲノム編集した、臓器欠損のブタの胚(および受精卵)に人間の幹細胞(ES細胞やiPS細胞)を注入して動物性集合胚を作り、これをブタの子宮へと戻して育成・出産させてヒト臓器を作りだす。

この研究にはもちろん問題や懸念もある。臓器移植をすることによって、ブタがもともと保因している内在性レトロウイルスに感染する可能性や、従来からある遺伝子工学技術への倫理的問題――例えば動物のような身体的特徴を持つ人間の作製や、ヒトの脳を持ちヒトと同等の認知能力を持つ動物などが造られるのではないかーーという懸念だ。これらはあくまで想像的な懸念に留まるが、その一部が実現可能な技術であるだけに、線引きは必要となる。


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このような倫理的問題が無いか確認するために、日本でこの研究を行うには各機関の倫理審査委員会と国の委員会で二重に審査が行われる。また、ヒトの臓器を持った個体と他の個体を交配させることは禁止されている。

また、今回の改定によって従来までは研究目的が「移植用臓器作成のための基礎的研究」のみに限定されていたが、今後は目的に限らず幅広い研究を行うことが認められた。これにより、例えばこれまで動物実験に頼っていた新薬の開発が、ヒトの臓器を持った動物を使うことで、ヒトの組織または臓器に対する新薬の影響をより詳しく調べることができるようになるのだ。早ければ来春にも、これらの研究は始まる見通しであるという。

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