思春期のストレスは社交性に影響――失われた社交性を取り戻す、マウスに学ぶ社交術

2019年2月27日


Mice flickr photo by spongebabyalwaysfull shared under a Creative Commons (BY-SA) license

時に、子どもの頃に受けた心の傷は生涯に爪痕を残す。特に思春期は人格の形成や社会的な関係性を身に付けるために重要な時期であり、この頃に受けた心理的なストレスは性格や社交性に大きな影響を与える。

これはヒトだけでなくマウスでも同じだ。ヒトの思春期に相当する時期である4~8週齢に集団から隔離させると様々な異常がみられるようになる。大きな音などの刺激に対して過剰に反応して恐怖したり、水の中に入れても泳がずにただ水面に浮いている時間が長くなるなど、意欲の低下がみられるようになるのだ。このマウスを詳しく調べると、うつ病などを発症している人と同じようにドーパミン神経系に異常が確認されるため、このマウスはうつ病などの精神疾患に相当する状態であることがうかがえる。

特に重要なのは社交性への影響だ。このような異常をきたしたマウスを集団のなかに戻しても、他のマウスを避けるように隅へと移動し、集団に馴染むまでに通常の何倍もの時間を要することが明らかとなっている。思春期における集団からの隔絶および心理的なストレスは、認知能力の低下を引き起こすだけでなく、社交性にも大きな影を落とし、社会からの孤立を助長させる。

一方で、2018年にある興味深い研究が発表された。東京大学・早稲田大学の研究チームらは、マウスを個体ごとに識別して自動で位置情報を取得するソフトウェアを開発し、マウスの集団における馴染みやすさについて解析を行った。その結果、思春期に隔絶されたマウスでも、「集団に馴染むのが得意なマウス」と同居させた場合、集団に馴染む時間が短くなることが明らかとなったのだ。

「集団に馴染むのが得意なマウス」は一体何をしたのか?

研究グループがデータを解析すると、「隔離されて過ごしたマウス」は他の個体に短いアプローチを何度もしているのに対して、「集団に馴染むのが得意なマウス」はむしろ他の個体へのアプローチの頻度が少ないことが明らかとなった。試しに、麻酔で眠らせて全くアプローチができなくなったマウスと一緒に「隔離されて過ごしたマウス」を同居させると、やはり集団に馴染む時間は短くなったのだ。結論をいえば、「集団に馴染むのが得意なマウス」はむしろ”何もしなかった”ということになる。

つまり、少なくともマウスの社交性においては初対面の相手でもうろたえたり警戒せず、落ち着いていてどっしりとした態度の相手や仲間がいることが重要らしい。

これはマウスだけでなく人間においても同じかもしれない。初対面の人たちと会う場面において、緊張せずに落ち着いた人がいればグループ全体の交流が滞りなく進むことだろう。同時に、精神的なケアが必要な人たちに対しても同じことが言える。今回の実験データと同じように、むやみに話しかけたり誘ったりといった積極的なアプローチは社交的な関りが苦手な人たちにとってはむしろ逆効果で、自然に話しかけて接してくれる方が安心できるのかもしれない。

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