国際陸上競技連盟が女性選手の男性ホルモン値に関して新規則を導入

2019年02月23日


La sud africaine: Caster Semenya, médaille d’argent aux 800m flickr photo by Citizen59 shared under a Creative Commons (BY-SA) license

南アフリカの女子陸上選手であるキャスター・セメンヤ(Caster Semenya)氏は、これまで数々の偉業を成し遂げてきた。2009年の世界陸上ベルリン大会で金メダルを獲得してから世界で注目を集め、2011年の世界陸上大邱大会、2012年のロンドン五輪、2016年のリオ五輪でそれぞれ金メダルを獲得し、2017年の世界陸上ロンドン大会では800mで金メダル、1500mで銅メダルを獲得するなど輝かしい実績を残している。しかし、2009年の世界陸上ベルリン大会で金メダルを獲得した直後から、彼女にある疑惑が浮上していた。

性別疑惑

恵まれた体格と男性らしいルックス、低い声・・・セメンヤ氏自身もそれは認めるところであり、子供のころから何度も男の子と疑われてはいじめられたと述べている。世界陸上ベルリン大会後、その身体的特徴や2位の選手記録と大きな差があったことなどからセメンヤ氏の性別に疑惑の声が上がり、のちにセメンヤ氏に対して性別検査が行われることとなった。

その結果、セメンヤ氏は”両性の性質”があることが明らかとなった。いわゆる性分化疾患であり、セメンヤ氏には子宮や卵巣がなく、そして不完全な精巣を持つという。精巣は男性ホルモンであるテストステロンを分泌するため男性のような体つき、および筋肉の発達に大きな影響を与える。オーストラリア紙が報じるところによると、セメンヤ氏は通常の女性の3倍以上ものテストステロンが分泌されているという。


Meeting de Paris, Stade Charlety – 30 juin 2018 flickr photo by y.caradec shared under a Creative Commons (BY-SA) license
テストステロン値が問題となっているのはキャスター・セメンヤ氏だけではない。新規則では他にもテストステロン値の高い何人かの選手が対象になるという。

このような問題を受けて国際陸上競技連盟は「女子競技における公正さを保つ」ために、テストステロン値の基準を設けた新たな出場規則を導入することを決定した。つまり、セメンヤ氏のようにテストステロン値の高い女性選手は、薬を服用してテストステロン値を抑えなければならないのだ。セメンヤ氏と南アフリカ陸上連盟はこの新しい出場規則に抗議し、スポーツ仲裁裁判所に提訴、現在は裁判が行われている。


Meeting de Paris, Stade Charlety – 30 juin 2018 flickr photo by y.caradec shared under a Creative Commons (BY-SA) license

性別と公正

競技において、どのような基準で男性と女性を分けるべきかについての問題は複雑だ。従来までは性染色体による性別判定が行われていたが、1985年に神戸で開催されたユニバーシアード大会に出場したスペインの陸上競技選手であるマリア・パティノ氏の例では、アンドロゲン不応症という疾患によって女性と変わらない外見・身体能力・性自認を有するにも関わらず、性染色体による性別診断ではXY、つまり男性となるために彼女は大会に出場することができなかった。
パティノ氏は帰国後、専門家の力を借りて3年かけてこの検査結果を覆した。性染色体による生物学的な性別判定では、必ずしも公正さが保証されるわけではないのだ。

身体的特徴、生物学的性別、そして性自認や性転換――競技における男女の公正さを守るための、ただ一つの答えなど恐らく存在しないのだろうが、必ず線引きは必要になる。今後はどのようになるのか、この裁判の成り行きを見守っていきたい。

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