日本で麻疹が急増、ワクチンの普及した現代でなぜ感染するのか?

2019年2月21日

f1778776f605fed5f0c1d7466772b43a_s

麻疹(はしか)の感染者数が、この時期としては過去10年間で最も多くなっている。下のグラフは過去の各年における麻疹の年間累計感染者数を表したものだ。(国立感染症研究所の速報グラフより) 

hashika

赤い折れ線グラフで示している2019年の累計感染者数は2月13日(第6週)時点で167人となっており、少なくともこのグラフでは過去5年で最も感染者数の多かった2014年よりも遥かに早いペースで感染者が増えている。

麻疹は一度でも感染すると終生免疫(生涯にわたる免疫)を獲得するため、ワクチンによって免疫を得ることでほぼ完全に予防できる病気であるように思われるが、麻疹のワクチン接種が予防接種法によって定められている現在においても、感染者が発生・増加するのはなぜなのだろうか?

麻疹の驚異的な感染力

麻疹は風邪やインフルエンザのように空気感染によって伝染するが、麻疹の感染力は非常に強いことが知られている。免疫が備わっていない集団に1人の発症者がいた場合、インフルエンザは1~2人程度の感染力であるのに対し、麻疹では12~14人と、インフルエンザの10倍以上の感染力を有しているのだ。

さらに、麻疹では特徴的な症状である発疹が現れる3~5日前と、さらに発疹が消失してから4日くらいまで感染させる能力がある。発疹が出る前の発熱を単なる風邪と勘違いしたり、発疹が治まったからといって公共施設や公共交通機関を利用すると一度に多くの人々が麻疹に感染してしまう恐れがあるのだ。

すべての人がワクチン接種をしているわけではない

麻疹ワクチンは1978年から予防接種法に基づいて生後12~24か月未満の子供に1回目の接種が義務づけられているが、毎年のワクチン接種率は約95%程度に留まっている。ワクチン接種を受けていない場合の多くは、その保護者がワクチン接種を軽視したり、あるいは副作用を懸念して過度に拒絶したり、宗教上の理由から子供へ医療行為そのものを受けさせないといった理由によるものだ。20人に1人という決して少なくない割合のため、上記で説明されている通り、麻疹の感染者が集団内に1人でもいた場合、ワクチン接種を受けていない人たちの間で感染がすぐに広がってしまうのだ。

ワクチン接種をしても免疫を獲得できるとは限らない

実は、ワクチンを接種したからといって全ての人が麻疹に対する免疫(抗体)を獲得できるわけではない。麻疹の場合はワクチン接種をした約95%の人が免疫を獲得するが、残りの約5%の人は麻疹に対する免疫の獲得に”失敗”するのだ。さらに、免疫を獲得しても数年経過すると10~20%の人は麻疹に対する免疫が徐々に低下して、麻疹を発症してしまうこともある。

これを防ぐために、2006年からは麻疹ワクチンを2回接種する制度が導入された。これにより1度目の接種で麻疹に対する免疫を獲得できなかった人たちは2度目の接種によって新たに免疫を獲得することができ、既に麻疹の抗体を持っている人たちは低下しつつある麻疹への免疫力を取り戻すことができるのだ。(ブースター効果または追加免疫効果という)

麻疹ワクチンを2度接種したときの抗体獲得率は99%とされており、麻疹に対する十分な予防効果が期待できるが、2度目のワクチン接種率は毎年90%は超えているものの目標とされている95%を下回っている。

麻疹との戦いは”後退している”

日本では2000年頃の大流行以降、麻疹予防への取り組みが進められ、2015年には「12か月間以上に渡って麻疹の地域的流行がない」という”麻疹排除状態”であることがWHO西太平洋地域麻疹排除認証委員会により認められており、現在では海外で感染した人が帰国後、一部で集団感染を引き起こす程度に留まっている(輸入感染)。

一方で、世界的に麻疹との戦いは後退している。2018年では世界の麻疹患者数が前年と比べて約50%増加しており、実際の感染者数はさらに多いとも言われている。海外へ渡航する際には麻疹が発生・流行している地域であるかどうかを確認し、2度目のワクチン接種を受けていない人はワクチン接種を完了してから渡航するように注意しよう。

関連記事
無くなってしまったはずの手足が痛む「幻肢痛」とは?
ノロウイルスについて知っておくべき10の事実
健康だった乳幼児が突然亡くなってしまう乳幼児突然死症候群(SIDS)とは?
相手から「愛されている」と思い込むクレランボー症候群とは?

医学カテゴリの最新記事