象牙の代用品としてマンモスの牙が流通、マンモスをワシントン条約で保護?

2019年2月1日


African Bush Elephants, Maasai Mara flickr photo by Ray in Manila shared under a Creative Commons (BY) license

現在、象牙をめぐる問題はあまりにも深刻化している。非人道的な方法でゾウが密猟され、個体数が減少しているという問題だけに留まらず、テロ組織らが高値で取引される象牙を活動の資金源としているからだ。

アフリカでは武装した組織の戦闘員らが保護区に侵入して密猟を行うだけでなく、保護区を守るレンジャーたちの命を奪い、周辺地域では略奪などの犯罪行為を繰り返している。さらには、ゾウの死体に集まって飛んでくるハゲワシなどによって密猟が発覚することを防ぐために、ゾウの死体には毒薬が撒かれる。ハゲワシをはじめ、動物の死骸を食べる多くの腐肉食動物が犠牲となっているのだ。(参考記事:ハゲワシはなぜハゲているのか?)

WWFの報告によれば、1979年時点で134万頭と推定されていたアフリカゾウの個体数は、2016年時点で42万頭にまで減少しており、現在年間2万頭ものアフリカゾウが違法に殺されているという。この事態を受けて近年では各国で象牙の取引が規制されており、特に世界最大の市場であった中国が、2017年をもって国内市場を閉鎖したことは非常に大きな影響を与えることとなった。

このように象牙市場が次第に規制され、縮小していく一方で”ある生物の牙”の需要が増加しつつあるという。かつて地球上に広く生息し、現代では既に絶滅しているマンモスだ。

象牙の規制が厳しくなるにつれて”マンモスの牙”が代用品としての需要が高まっており、ワシントン条約で象牙の輸出入が規制された1990年以降、価格が急激に上昇している。ロシアのサハ共和国では永久凍土にマンモスの化石が広範囲に渡って埋まっており、推定でなんと50万トンものマンモスの”牙”が埋まっているという。極寒の厳しい環境のため、あらゆる産業が困難であったサハ共和国は現在、マンモス・ラッシュに沸いているのだ。

しかしその一方で、ある”興味深い”別の動きもある。2019年5月にスリランカで行われる条約締約国会議に向けて、イスラエルとケニアがワシントン条約マンモスを加えるべきという提案があったのだ。

ワシントン条約は”絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引に関する条約”で、文字通り「絶滅の恐れがある野生生物の取引」をする際の国際的なルールを定めたものだ。取引されるものは対象となる動植物の生体のみならず、動物の爪や骨、もちろん象牙や、その加工品なども含まれている。しかしながら、本来は「絶滅の恐れがある野生生物」を守るための条約に、なぜ絶滅動物であるマンモスが提案されたのだろうか?

実は、マンモスの牙と偽って象牙が流通している例も少なくないのだ。象牙とマンモスの牙は非常に似ており、加工品ともなると判別が非常に難しい。マンモスの牙に関する取引をワシントン条約で規制することで、マンモスの牙と偽って象牙が密輸されることを防ぐのがこの提案の狙いだ。


Tusks flickr photo by quinn.anya shared under a Creative Commons (BY-SA) license
一般に、マンモスの牙は現存するゾウとは異なり、大きく牙が湾曲する。貴重なマンモスの化石が大量に取引されるのは問題に思われるかもしれないが、サハ共和国の研究者らによると、採掘が活発化されることでむしろ多くの発見が期待できるという利点があるという。

マンモスの牙によって経済が活性化したサハ共和国の住民たちは「自分たちがマンモスの牙を採掘し、流通させることによってゾウの密猟を防ぐことに役立っている」と反論している。確かに、マンモスを天然資源として扱い、象牙とマンモスの牙とを厳密に区別して流通できるなら彼らの主張は間違ってはいないだろう。今は結論を急がずに、成り行きを見守るべきだろう。

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