ジンベエザメは意外にも海藻などをよく食べる「草食」だった

2019年1月18日


FGBNMS — Whale Shark flickr photo by National Marine Sanctuaries shared with no copyright restrictions using Creative Commons Public Domain Mark (PDM)

サメは一括りにはできないほど多様な生態を持っている。(参考記事:卵、共食い、ミルクまで――サメの驚くべき繁殖方法の多様性とは?)そのなかでも、ひときわ異色を放つのがジンベエザメだ。英語では”Whale shark(ホエールシャーク)”と呼ばれるように、まるでクジラのような巨大な体が特徴的で、全長は10mから最大で20mにもなる世界最大の魚類だ。

この巨体を維持しているエネルギー源は主に、意外にも動物プランクトンや小魚などだ。ジンベエザメはその大きな口で餌を海水ごと取り込み、それを鰓耙(さいは)と呼ばれるくし状の特殊な器官で餌だけをこし取って食べるのだ。

しかし、2019年1月16日に発表された東京大学の大気海洋研究所と海洋研究開発機構、沖縄美ら島財団の共同研究によると、どうやらジンベエザメは動物プランクトンや小魚だけでなく海藻などの植物性の餌も多く摂取しているようだ。


Whale Shark flickr photo by KAZ2.0 shared under a Creative Commons (BY-SA) license

これまで、ある種の魚類が食物連鎖においてどのような位置にあり、そしてどのような海域で餌を食べているのかを調べるには血液中や組織に含まれる炭素や窒素などの同位体の比率が用いられてきた。しかし、尿素で体液調整を行うなど特殊な生理機構を持つサメは同位体の比率の変動が不規則で、他の魚類と同じような手法で研究を行うことはこれまで困難であった。

そこで研究チームは沖縄美ら海水族館で長期に飼育されていたジンベエザメの血液を採取し、詳しく調べることによって同位体の比率変動がどのような意味を持つのかについて明らかにした。これによりジンベエザメの食物連鎖における位置や採餌する海域などを詳しく調べられるようになったのだ。

食物連鎖において、ある生物がどのような位置に存在するかについては、「栄養段階」という指標が用いられる。例えば植物プランクトンや海藻などの栄養段階は「1」、それらを食べる動物プランクトンは「2」、さらに動物プランクトンを食べる小魚などは「3」、さらにその小魚などを食べる大型の魚は「4」といった具合だ。この栄養段階の数字が大きくなればなるほど、食物連鎖においてより上位にいるということになる。

ジンベエザメの同位体の比率からこの栄養段階の推定を行った結果、その数値は「2.7」程度と推定された。これは動物プランクトンを食べる小魚の栄養段階である「3」よりも低い数値だ。ジンベエザメが、これまで考えられていたように動物プランクトンや、動物プランクトンを食べる小魚を主食としているのなら、少なくとも栄養段階は「3」よりも大きい結果になるはずであった。これは、ジンベエザメが海藻などの植物性の餌をよく摂取していることを示すものである。


Whale Shark flickr photo by MrGuilt shared under a Creative Commons (BY) license

ジンベエザメが海藻を食べていることは、1950年代以降から行われてきた胃の内容物の調査からもよく知られていたが、今回の研究結果はそれを裏付けるだけでなくジンベエザメの生態について新たな知見を与え、そして絶滅危惧種にも指定されているジンベエザメを保護することにも大いに役立つことだろう。

関連記事
卵、共食い、ミルクまで――サメの驚くべき繁殖方法の多様性とは?
サメのヒレだけを切り取って海へと捨てる「シャーク・フィニング」とは?
水族館の魚が共食いをしない理由とは?
自然からヒントを得る バイオミメティクスとは?

生命科学カテゴリの最新記事